エンタメ

LGBT差別をなくすため「ミュージカル」を立ち上げた30人の男たち――女装小説家・仙田学

女装メンバーには公務員や医者なども


 実際に、脚本、演出を始め携わっているスタッフは音楽業界の人ばかりだという。特にこの歌劇団をバックアップしているナラドエンタテインメントの社長でありプロデューサーの新田一郎氏は’70年代に活躍した伝説のバンド「スペクトラム」のリーダーであり、爆風スランプや嘉門達夫などをブレイクさせたことで有名な方で、稽古ではかなり高いレベルを要求される。

 くりこさんを含めてほとんどのメンバーは演技の経験がないため、稽古についていくのは大変らしい。

「プロデューサーからは、『女装子』を演じるんじゃなくて、『素のままの自分を出せ』って言われています。これが、意識すると難しくて……。他のメンバーも苦労してるけど、みんなすごく前向きなので助かってます」

 稽古は夜間に行われる。他のメンバーのほとんどが、昼間に仕事をしているからだ。しかも公務員や医師など、女装趣味を口外しづらい職種に就いている。

 なかには職場でバレてイジメにあったり、家族にカミングアウトをしたことで離婚に至ったり、身近な差別や偏見にさらされている人も。

圧倒的なエンタメ集団を目指す


「劇団員のみんなを幸せにしてあげたい」

 女装子歌劇団のリーダーとして、公私ともにメンバーと関わるうちに、くりこさんはそんな願いを強く持つようになったという。

「そのために必要なのは、女装子歌劇団がひとつのブランドになることです。少数者の価値観が多くの人に理解されるには時間がかかります。時間をかけても理解されないことも多いですし。でも、有名になって、多くの人に認知されさえすれば……。

 人は、理解できないものでも受け容れることがありますから。音楽やってる方が紅白を目指すのもそうかもしれません。世間に認められたいっていうより、世間に認められることで、家族や親戚や友達の見る目を変えたいんじゃないかな」

 女装子歌劇団が圧倒的なエンタメ集団としてのブランドを築こうとしているのは、あらゆる少数者への差別や偏見を世の中からなくすためなのだ。

次のページ 
目標は「2年後の日本武道館」

1
2
3
※女装子歌劇団の公演の詳細はこちら




おすすめ記事