客層という観点で見ると、男同士というケースもまた興味深いですね。これまた作り話でもなんでもなく、女の格好をした男集団がやって来て、 「一つの部屋に12人で入りたいんですけど、いけますかね？」 　なんて言ってきたりもしますし。 　ただ、お客様の性癖については、とやかく言うつもりはないですし、さほど気にもしません。が、気になるのはそっち系の雰囲気がまったくしない、どこか挙動のおかしい男2人組です。 　2回ほど、そういう男同士の方がホテルを出たところで警察官に職質され、連行されていく場面を見たことがあります。この男性同士の客、ヤバイ薬の使用や取引目的だったのでは、と私は睨んでいます。 　客のことをあーだこーだ言うだけではアレなので、最後にスタッフの裏話についても語っておきます。 　今どきのラブホはどこもそうだと思いますが、うちのラブホはスタッフの大半が東南アジア系外国人です。彼らを雇うメリットは、手間いらずの求人ということ。 「来週カラ来レル人、探シテイルンデスカ？ 私ノ友達、明日カラデモ来レマス」 　独自のネットワークですぐに人を呼んでくるんですが、ときに外国人スタッフたちは、私たち同僚の日本人スタッフにこんな提案もしてきます。 「私ノ兄ト結婚シテモラエマセンカ？ オ金ヲ払イマスンデ」 「向コウカラ呼ビタイ人間ガイマス。ソノ人間ト結婚シテクレマセンカ？ オ金ヲ払イマスンデ」 　そう、偽装結婚の持ちかけです。労働ビザを持ってない家族をサポートしよう、仲間から仲介代金を頂こう、という考えなんでしょう。ギャラの相場は50～200万円です。 　話に乗る日本人がいるのかって？ いますよ。こう言っちゃなんですが、ラブホで働いている日本人スタッフの中には、経済的に余裕がなく、戸籍が汚れることなんて別になんとも思っていないようない人間が少なくありませんから。 　この偽装結婚の提案、うちのホテルだけの話ではなく、歌舞伎町の他のラブホでも行われているとしたら、ぞっとします。 ※　※　※ 　他にも、激しくプレイした結果、洗面台が糞尿まみれになる、隣の部屋から喘ぎ越えというより叫び声が一晩中響いて寝れないというクレームが入る、などさまざまなトラブルがあるとか。いやー、清濁併せ呑む（いや、濁しかないか……）歌舞伎町のラブホ業界、興味深いです。 ＊＊＊＊＊＊ 【仙頭正教】 歌舞伎町ガイド人。立ちんぼスポットからボッタクリ客引き、心霊ビルまで、町の“怪しい”に精通。月2回、カブキの裏スポットを案内する『歌舞伎町観察ツアー』を開催中。ツイッター（＠sento1025） ※月刊『裏モノJAPAN』編集部・所属