更新日:2022年11月20日 10:40
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高級布団は下町のほうが売れ、関西では天然素材が好まれる――意外と知らない寝具の「地域差」の話<元ふとん屋が教えます>

湿気に悩む奈良県

 地域の特色ということなら、外せないのが奈良県北部です。同地域ではパンを買うとき、店員さんがカビについての注意を一言添えてくれるという。  それくらい湿度が高く、カビやすい気候なんですね。盆地特有です。なので天然素材への愛着が強い関西にあって、ウレタン素材が逸早く浸透したのはここでした。  天然素材よりウレタンのほうが乾きがいいので、新素材でも受け入れられやすかったんです。奈良の物件には除湿室があるなんて話もあちこちで聞きましたからね。必要は需要の母とはよく言ったものです。

寝具店空白地帯の沖縄県

 沖縄には寝具店はありません。  いや、さすがにこれは言い過ぎで、正確には有名メーカー品の取扱店が数えるほどしかないんです。  なぜ? 一年中暖かいから? 答えは送料です。  沖縄は特に大きな物の運賃が高すぎて、送りたくとも送れない。寝具の粗利ではペイできないんです。  以前、僕の店から沖縄へムアツふとんを発送したんですが、送料がなんと1万5000円(税別)!あまりに高額なんで本当に送っていいのかお客さんに再三確認しちゃいました。

無地寝具は東京にしかない?

 有名メーカーの寝具がいいんだよ、と言われて店に行ったら「花が一杯に咲いたガラモノしかないので買えなかった」という話があります。シックな無地で寝室をスタイリッシュに構築したい、だけど寝具は良いものが欲しいし……。そんな当たり前の需要を満たせないのは全国共通の悩みです。  僕の店は無地専門店だったのですが、実はコレ、有名メーカーの系列店では日本唯一でした。無地のものが置いてあっても本当に申し訳程度に店の端に寄せられてあるだけで、店内を埋め尽くすのは花柄・チェック・ドットのオンパレード……、全国どこでもこんな有様です。  では無地寝具が欲しい場合はどうすれば?  正直なところ、有名メーカーの無地寝具を選んで買いたい場合、東京に行くしかないです。それも普通の寝具店では無理で、具体的には(伏字だけど)百貨店のIかTしかない。  これは寝具本体だけではなくて、カバーなんかでも同じです。  以前ある有名メーカーに問い合わせたら、300種類のカバーのうち無地は4種類だけでした。その比率わずか1.3%!そんな数少ないアイテムを集めて店頭展開しているのが上記の百貨店です。有名メーカーの無地寝具が欲しい全国の皆様、東京へ起こしの際はぜひお立ち寄りください。  地域性というとほかにも、関東関西ではカバーに求める色彩が微妙に異なったりとか、ブランケットに求める感触の地域差とか、話したいネタはいろいろあるんですがキリがないので今回はこの辺で。  みなさんの寝具の常識、一歩外へ出たら全然異端ということもありえるかも? 【大野悦史】 元寝具店経営者。都内で十数年ほど寝具店を経営し、その後は寝具コンシェルジュとして活動中。最新寝具のレビュー情報や睡眠豆知識を紹介するブログ「寝具の情報・ニュースまとめブログ」も運営している。
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