お金

僕のどこが面白いのかわからない――「お金0.0」ビットコイン盗まレーター日記〈第13回〉

―[「お金0.0」]―
 約1000万円近い仮想通貨を盗まれた出野達也(23歳)。脇の甘さで仮想通貨を盗まれただけの男に目をつけたのは、有名実業家のAとB、そして2人から紹介を受けたSPA!編集部。本連載の座組みが一通り解明されたところで、出野はチャット上だけの知り合いだったAと初めて対面することに。正直、聞きたいこと、話したいことがありすぎる!「お金0.0」、連載13回目。出野の目まぐるしく回る一日をお楽しみください。 仮想通貨で1000万円稼いだ若者を襲った悲劇のお話第13回 オワコン ——-先週からのつづき 僕「なんと!僕の盗まれた話が連載することになりました!!!」 母「へー」 僕「反応薄ない?」 母「なんぼもらえるんよ?」 僕「家賃の…12分の1くらい…」 母「少ないやん」 僕「いや、額は少ないかもしれんけど、連載だよ!れんさい!」 母「へー。じゃ、仕事あるけ。ほいじゃあの。」 ガチャリンコ 素っ気ない。素っ気ない母と友達のいない僕。 うーん。Aさんに報告してみるか。 僕 「Aさん、早速母に連載の開始について報告しました!」 A 「おー。なんてゆってた?」 僕 「はい!原稿料すくないのぅって言ってました!」 A 「そうか。じゃあさっさと第2話の箇条書き送れ」 僕 「はい…」 僕が文章だと思って送っていたダイヤモンドは、Aさんから見たらカジョーガキに見えていたらしい。 A 「物事が動き始めたら、一喜一憂してる暇ないから。テキパキ進めるんや」 僕 「はい!」 A 「あ、ところでいまヒマ? お夜食探して徘徊中なんだけど、東京駅あたりまでくる?」 僕 「え!?は、はい!!!」 ――― ―― ― Aさんが指定した場所は東京駅八重洲北口。Aさんは40分後につくらしい。 連載が始まるまで毎日日記を送り続け、一度も会わないままに連載が決まった。 Aさんは怖い人だろうか、優しい人だろうか、お金貸してくれたりしないだろうか。貸してくれたら連載は終わるのだろうか。 西新宿から丸ノ内線に揺られること30分、不安とつり革を握りしめ、僕は丸の内北口に到着した。 丸の内北口。ということはここは八重洲北口ではない。 A 「ついたよー。八重洲北口の高速バスの後ろにくるまとめてる」 僕 「はい!あの、八重洲北口ってどこですか。」 A 位置情報ピコーン 僕 「いま行きます!!!」 A 「ゴユックリ。車のナンバーはxx-xxです」 遠い。すごく遠い。駅の東西を結ぶ通路を駆け抜けて、更に左に折れてゆく。 長い。とても長い。遠くに見える出口らしきものまで200mはあるんじゃないか。 出口の先の闇は、僕の未来に続くのか、それともそのまま闇なのか。 遠く見える重力に吸い込まれていくように駅のコンコースを走りきり、僕は八重洲北口にたどり着いた。 Aさんの車はすぐにわかった。いくつものバスに挟まれて、異様な存在感を放っている。 恐る恐る近づき、助手席越しに運転席を見たら目が合った。めっちゃ笑顔。 A「はじめまして。ずいぶん走ったね」 僕「はい!」 車に乗り込み、そこからいろんな話をした。 仕事のこと、お金のこと、家族のこと、親友さんのこと、連載のこと、運のこと、実感のなさにどう慣れるか。ひととおり車で走りながらあれこれ話をして、最後にずっと聞きたかったことを聞いてみた。 僕「あの…、なんで僕を助けてくれるんですか?Aさんも、Bさんも」 A「んーーーーーーー、いまんとこ面白いから。」 僕「……いまんとこ…」 面白くなくなったら飽きるのだろうか。起業家という人種は飽きっぽいと聞いたことがある。 とはいえ僕は僕で、僕のどこが面白いのかいまいちわからない。 自分でもわからない面白さが途絶えた時、僕が渡っている吊り橋も落下するシステムだ。あかんがな。 A「ま、でも連載の一回め、たのしみだよね。コガネ持ってるタダの若い奴よりも、物語持ってる貧乏青年のほうがずっと味があるし、あれこれ言いたがる人たちを中心に賛否両論あるかもしれないけど、覚悟決めてエンタメに徹したら良い物語になるんじゃないかと思ってるよ」 僕「ありがとうございます!」 A「物語のない金持ちは醜いからねぇ…。なんかあれこれ話したらお夜食行くのめんどくさくなったな。オウチまで送るわ。新宿だよね?」 僕「はい!」 やはり起業家は飽きっぽい。平気で予定を変えてくる。 Aさんの車は首都高を滑るように走り抜け、いくつもの曲線を描いていく。 物語…。 考えたこともなかった自分の財産に気付かされたような気持ちになるが、やっぱりイマイチピンとこない。 僕「あの…」 A「はい」 僕「僕の状況って…やっぱりそんなにおもしろいんですか?」 A「んーーーーーー、王道の展開ではあるし、それなりに追加のハプニングもあって、しかもこれからまだまだ何か起きそうな感じはあるけども、本人がその面白さを理解しちゃうとカワイゲないかもね。MCが妙に達者な地下アイドルみたいであざとくなる。でも基本的に空気読めない部類の若者だとは思うので、そこらへんは心配ない。だけど、【やっぱりそんなに】ってのは余計だな。低次元な自己愛はコンテンツをすぐ腐らせる」 僕「ほ…褒められたんですかね…」 A「客観的に状況を言語化しただけ。褒められたかどうかで行動が変わるのはプロではないので淡々と良いものをつくりましょう」 僕「はい!」 褒められたかどうかよくわからない状況のまま、車は文鳥の待つ事故物件の前にたどり着いた。 A「じゃ、おつかれ。またなんでもカジョーガキおくってねー」 僕「はい!!!おやすみなさい!!!!!」 ―――― ――― ―-
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いよいよ連載第一回公開日に
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