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ビットコイン被害者界の“エースの自覚”――「お金0.0」ビットコイン盗まレーター日記〈第12回〉

 約1000万円近い仮想通貨を盗まれた出野達也(23歳)。オンラインサロン上で知り合った有名実業家のAとBとの叱咤とも激励ともわからぬ掛け合いに巻き込まれていくうち、気づけばSPA!編集部にて連載の打ち合わせが始まっていた。果たして、脇の甘さで仮想通貨を盗まれただけの無名の男のストーリーは、かの名作『まんが道』や『男の星座』を凌駕する一代記となり得るのか。「お金0.0」、連載12回目。今回も引き続き、本連載の誕生前夜に遡ります

仮想通貨で1000万円稼いだ若者を襲った悲劇のお話 第12回 ダイヤモンド

——-先週からのつづき

ス(SPA!編集部・スギナミ)
「Aさん。出野くんと2時間ほど打合せして、だいぶ感じがつかめました」
A(有名実業家)
「おー。ありがとうございます。どうでした?」


「おもしろいですね。荒削りですが、Aさん言うように持ってると思います」
A
「デショ。持ってるんです。ただ、実力と勘違いしてすぐ図に乗るので、チャンスには去られがちです」


「あー。でもまぁ若いときってそんなもんじゃないですか? Aさんも僕も」
A
「耳が痛くて気絶するから」


「いずれにせよ、小遣い銭の投資ではなくて元手をかき集めてのオールインですから、これからもいろいろ起こることでしょう。原稿はAさんにもCCしてもらいますので、引き続きフォローしていただけると嬉しいです」
A
「リョカイ。彼の原稿を尊重しつつ、読みやすくなるようにちょっとだけ手を入れるようにします。で、連載の原稿料は全部彼にあげてください。今回のことで迷惑かけた親友さんや親御さんに、大きく恩返しをさせなきゃいけない」

「了解しました」

A
「ダメ元で、やるだけやって様子みましょう」

——–

——

—-


巨大なオフィスビルを後にした僕は、すぐに自宅に戻り、第一話を書きなぐった。

目の前にたらされた一本の細い糸。この糸を手繰り寄せたらその先には助かる未来があるかもしれない。見渡す限り他に糸はなく、糸は細くて頼りないけれど、無課金ユーザー並に何もない僕は夢中で糸を巻き続けた。



「よし…できた…」

宛先: スギナミさん
CC:Aさん、Bさん
件名:お金0.0 第1話

送信!

2分後、すぐにAさんから返信がきた。

A
「すごくいいね。読みやすさ刺さりやすさをちょっと調整してのちほど修正版おくりまーす」

「ありがとうございます!!!」

45分後

A
「修正版おくりますー https://nikkan-spa.jp/1453139

僕が送った石コロがダイヤモンドになって帰ってきた。いや、でも僕が送ったのもダイヤモンドだったはず。だけど圧倒的に、読みやすさが、違う…。

まるで僕の後ろからずっと見てたんじゃないかと思うくらいに熱がある。すぐそばで、僕の死角で、ニヤニヤしながらすべて見てたんじゃないだろうか。この短時間でどうやってこんな描写ができるんだ…。普段なに食べてるんだろう…。


「むっちゃ面白いです!ありがとうございます!!!」
A
「ヌハハハハハハ」

スギナミさんからも返信がきた。


「Aさんありがとうこざいます。さすがです。グッといい感じになりましたね。特に二次会後の無敵感、高揚感、凄く伝わります。

出野くん、Aさんが修正したとおり、その時々の感情を本音で文字に起こすという点を意識すると、より生きた原稿になると思います。記事は広く公開されるので、理論武装したり、自分の行動を正当化したりしたい気も出てくるとは思いますが、かっこつけず、恥ずかしいこともダサいこともそのまま言語化してみてください。この記事に対してさまざまな中傷も出てくるとは思いますが、そういった声に振り回されずにいきましょう!」


「はい!!!!」

Aさんの完璧な修正とスギナミさんの的確な指示、僕もビットコイン被害者界のエースとしての自覚が高まった。

A
「ところで今回の連載のロゴとかイラストとか、検討中のイメージありますか?」

「タイトルロゴ案が3パターンあります。個人的には、1番がよくてタイトルの色を他の2パターンに合わせるといいかなと思っています。忌憚のないご意見をいただければ。ご確認、お願いします」
A
「リョカイ」

速い。なんてスピードだ。僕も何かで貢献しなくては。


「タイトルロゴを少しいじってみました!!!人物と文字以外の彩度をほんの少しだけ落とすとタイトルが見やすくなりました。ご検討お願いします!」

僕だってこれくらいはできる。少しは役に立っていいとこ見せないと。すぐにAさんから返信がきた。

「達也。なかなかやるやん」

とか言われるんだろうなぁ。あー楽しみ。

A
「たつや、プロが動いてんだから出しゃばんな。」

「もうしわけ…ございません…」

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