仕事

「連ドラ撮影は自殺者が出てもおかしくない」若手ADが見た異常な現場

連ドラ撮影は自殺者が出てもおかしくない

 宇田川さんが「もう限界だった」と振り返るのは2週間ぶっ通しで行われたロケの仕事だ。睡眠は取れても1日3時間、休日などあるはずがない。 「みんな意識がもうろうとしているので部下も上司も関係なくミスの嵐ですよ。でもね、私の場合2週間で終わりましたけど、連ドラの撮影なんてもっと地獄らしいですよ。これが3か月続くんですから。誰か1人くらい首を吊ってもおかしくない。スタッフが飛ぶ(突然いなくなる)こともよくあるそうですよ」  宇田川さんの仕事現場はまさに1000本ノックのよう。1000本もあればそりゃ150本くらい捕れないよ、という話だ。しかし監督はお構いなしに「気合が足りないから取れねえんだよ!」と打球はどんどん強くなる。 「でも上司もクライアントにムチャを言われているわけですから、私が言い返したところでどうにもならないんですよ。メチャクチャな上司は多いですが、運命共同体だからしょうがないな、という面もあるんです」  ロケでカメラを回すには道路でもどこでも許可が必要となるが、納期が迫っている時はそんなこといちいちやっていられない。「許可? 知るかよ、やっちまうんだよ!」と上司もリスクを抱えているので部下は黙って付いていくしかないのだ。口答えなんてもってのほか。無理難題を言われても、ただ「はい」と答えるしかない。

テレビ業界はガラパゴス諸島!?

 ADにとってさらにしんどいのは「待ち」の時間だという。とくに入りたてのADは編集作業などまだできない仕事も多く、ロケから会社に帰ってきた後などは手持ち無沙汰になる。 「ロケが終わったらそのまま編集作業に入りますが、新人は“待ち”の時間になります。気を抜いたら3日後くらいまで気を失いそうですが、寝たら終わりです」  上司からは「俺が仕事してるんだからお前ら寝るんじゃねえぞ」と無言のプレッシャーがかけられ(直接言われたこともあるそうだ)、新人同士の間では「お前が寝たら俺が起きている意味が分からなくなるから寝るんじゃねえぞ」と牽制しあう。寝られる人はそのうちに寝とけばいいじゃないかとも思うが、宇田川さんいわく「考えられない。寝る気にもならない」という。 「この業界は社会の中じゃガラパゴス諸島ですからね。一般的な社会のルールなんて通用しないんですよ」  テレビ業界は労働条件がすこぶる悪いというイメージが定着し、若者離れが著しい。宇田川さんも「若いADがこれから入ってくることなんてあるんですかね」とぼやきながら、自身の将来についても不安な表情を見せていた。<取材・文/國友公司> ― 本当に実在した! 隣のブラック上司たち ―
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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