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財務省は本気で「デフレ脱却前の消費税10%」が自分たちの仕事だと思っているのか?

 最も早く「岡本次官」を報じたマスメディアはNHKだった。さすがである。もう一つ。手前味噌だが、不肖倉山が主宰するインターネット番組の「チャンネルくらら」で、ジャーナリストの山村明義氏だけは「財務省の本音は岡本だ」と言い続けた。別に予想が当たったのだと自慢する気はない。  私はデビュー2作目が『財務省の近現代史』であり、財務省について語ってきた。もう6年になる。時に激励し、時に批判しながら。財務省を語ることこそ、天下国家を論じることに他ならないと信じているからだ。  財務事務次官人事が、これほどメディアで報道されたのも史上初だ。しかし、その意味がどれほど伝わっただろうか。日本の運命が決まるということなのだが。  岡本次官は就任の会見で、来年10月の消費増税10%を明言した。安倍首相も既に閣議決定している。デフレ脱却前の消費増税など、8%実施の時に懲りているはずだが、どうもそうなっていない。このままでは、日本経済の破滅は必定である。  だが、希望はある。岡本次官の後任主計局長は、昭和58年同期入省の太田充氏となった。通常、事務次官は同期から1人である。大物次官は2年務めるが、その場合は次官を出せない期が出る。既に59年組は次官を出せないことは決まったが、岡本氏が2年やると、太田次官(これは確定)と合わせて58年組が3年務めることとなる。  来年の人事は6~7月。7月は参議院選挙があり、10月の増税前の大決戦だ。その時の財務次官が太田なら恐るるに足らず。岡本でも、切り死に覚悟で戦うしかない。  まず手始めは、今年秋に安倍首相の続投が予想される自民党総裁選の後の臨時国会だ。野党とメディアは既に1年半以上も「モリカケ」を騒ぎ続けているが、これこそ増税阻止の第一歩だ。  野党が岡本次官の任命責任を安倍首相に追及する。「公文書書き換えを知っていたなら犯罪者、知らなければ無能者だ。いずれか?」と。どうせ、こんな質問はできまい。何かの一つ覚えでモリカケを追及するだろう。その時、自民党がヤジればいい。「岡本が怖いか?」と。岡本次官は自分の名前が出るのを恐れ、「ステルス」を決め込んでいただろう。国会で自分がさらし者になるくらいなら、野党を黙らせてくれるかもしれない。まずは敵の力を削ぐことだ。  ところで、財務省の職員は、本気で「デフレ脱却前の増税」が自分たちの仕事だと思っているのだろうか。  本来の大蔵省は、国民を富ませ、国を守るのが仕事である。戦前、大蔵大臣を7度も務め、「不況乗り切りの達人」と言われた高橋是清は、「富国裕民」と称した。今でこそ「増税省」などと揶揄されているが、本来の恒久増税は戦争と同じくらいの大事件なのだ。何より、増税は経済成長との両にらみでなければ、肝心の税収が増えない。  財務省が国民と乖離するのは不幸だ。本来の大蔵省の姿に戻ることが、岡本次官の真の使命だ。<文/倉山 満>
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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