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財務省は本気で「デフレ脱却前の消費税10%」が自分たちの仕事だと思っているのか?

― 連載「倉山満の言論ストロングスタイル」―

凋落した財務省に踊らされたのは、劣化したメディアの方だ


言論ストロングスタイル

7月27日、霞が関で報道陣の質問に答える岡本薫明事務次官。就任後の記者会見で、消費税増税について「ぜひ実現したい」と意欲を示すが、増税阻止の路はあるのか(写真/時事通信社)

 日本のマスメディアは、おバカの見本市か? そこまでこき下ろすと悪いと言うなら、日本のメディアのどこにジャーナリズムがあるのか? お答え願おう。

 今回の財務省人事は、史上最激戦と化した。そして結局、かねてより大本命中の大本命と目された岡本薫明主計局長が事務次官に昇格した。

 次官候補に挙がった名前は、計5人。前身の大蔵省では10年先の人事まで決めていたらしいが、そんな最強官庁の面影はないかのように見える。凋落の財務省……多くのメディアが書き立てた。しかし、その凋落した財務省に踊らされたのは、劣化したメディアの方だった。財務次官人事でこれほど観測記事と誤報が飛び交ったのも、史上初なのだから。

 この間、いったい何が起きていたのか?

 事の発端は、モリカケ騒動である。財務省近畿財務局が国有地の払い下げに関して不正を働いたとの疑惑から、財務省理財局による公文書書き換えが問題となった。結果、当時の理財局長で現職国税庁長官の佐川宣寿が辞職に追いこまれた。

 さらに、現職事務次官の福田淳一もセクハラ疑惑で辞任。事務次官と国税庁長官のトップ人事が不在となり、財務省は異常事態となった。表向きは。

 財務事務次官は、主計局長から昇格するのが大蔵省以来の慣習法である。ダグラス・マッカーサーの圧力で次官の座を逃した福田赳夫などは、「あの人は主計局長をやったのに事務次官になれなかった。せめて総理大臣にはしてあげなければ」と同情され、その通りになった。財務省とは、そういう組織なのである。

 福田辞任で、本来ならば即座に岡本主計局長が昇格してもおかしくなかった。しかし、岡本氏は公文書書き換えの際、文書管理を担当する官房長だった。国会の証人喚問で佐川氏は「理財局だけでやった」と言い張ったが、誰が信じるのか。

 財務省は、岡本氏は関与していなかったが、管理責任はあるとして文書厳重注意処分とした。そして、モリカケ騒動の嵐がすぎるまで「温存」して、次官昇格を1年見送る方向だとの観測に基づき、多くの誤報が飛び交った。どれほどのメディアが間違いを犯したか。新聞では産経・読売・朝日・毎日・日経・東京、通信社は時事と共同、つまり全滅である。誤報を飛ばしたメディアは、政治に振り回されたからだ。

 麻生太郎財務大臣は腹心の浅川雅嗣財務官を据えようとし、それを阻止しようとした首相官邸は星野次彦主税局長を持ち上げて対抗する。結果、両氏のスキャンダルが飛び交って痛み分け、一周回って大本命の岡本氏が次官を射止めた。「浅川」「星野」といった名前を挙げたのは、特定の取材源に頼り切っていたからだ(それを堂々と、「麻生を信じた」と言い訳としてあげる日経新聞は如何なものかと思うが)。

 記者会見で麻生氏は、人事は「自分が決めた」と声を荒らげたが、本当に意のままになったのなら、もっとうれしげな態度をとるだろう。わかりやすい御仁だ。結局、この人も「守護神」と持ち上げられてはいるが、財務省にいいように使われているだけなのである。そして首相官邸も、財務省のシナリオから一歩も出られなかった。

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財務省を語ることこそ、天下国家を論じること

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嘘だらけの日独近現代史

世界大戦に二度も負けたのに、なぜドイツは立ち直れたのか?





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