小橋：1回勝ったらそれですべてが変わるのかと言ったら、そうはなかなかならないのがプロレス。橋本選手が里村選手に勝ったから、じゃあもう、センダイガールズのトップは橋本選手なのかと言ったら、勝ったところから築き上げていくのがプロレスだから。1回勝っただけでは時代は動かない。それがプロレスの面白いところでもあり、難しいところでもある。でも橋本選手は、いま確実に時代を動かしている選手だと俺は思っているよ。 橋本：ありがとうございます！　いま女子プロレスのお客さんは男性が多いので、女性のファンを増やして、女子が憧れるような世界を作りたいです。 ――どうすれば女性ファンが増えるでしょうか？ 橋本：スター選手が出てこないと、と思います。いま女子プロレス界には、そこまでの選手はいない気がするので。時間は掛かるかもしれないんですけど、自分が最初に突き抜けていきたいというのはあります。 小橋：時代を変えるのは、すごく難しい。けど、橋本選手はそれをやれる位置にいるし、そういう存在でもあるから、自分を信じて頑張ってほしいなと思う。力強さを感じさせるという意味で、橋本選手は断トツだよ。オンリーワンで突き抜けることが、ナンバーワンに繋がっていくから。どの団体でもやれると思うよ。アジャ・コング選手とやったことある？ 橋本：去年は何度も闘いました。 小橋：彼女、ゴツいよね。どうだった？ 橋本：デビュー3ヶ月くらいでシングルマッチをやったんですが、初めて「あ、この人にはまだ勝てないな」と思いました。なにもできなかったんですよね。レスリングは階級があるんですけど、プロレスは無差別じゃないですか。そこで自分の倍くらいの体重の人を、どうやって倒せるのかっていう壁にぶつかりました。けど、アジャ選手を倒してから、自分の見る世界が広がったというか。本当に成長できたなと思います。 小橋：3か月で、女子プロレス界で名前のある選手とシングルマッチをやるというのは、相当期待されていたと思う。いま、女子プロレスは試合数が少ないでしょ？　橋本選手が突き抜けることで、試合数も増やしていって、改革をしていかないとね。女子でこれだけ太い腕の選手はいない。初めて見たとき、いい女子プロレスラーが出てきたなと思ったよ。 【PROFILE】 ●橋本千紘（はしもと・ちひろ） センダイガールズプロレスリング所属。‘92年7月1日、福井県坂井市生まれ。中学3年の夏、センダイガールズの入門テストを受験し、内定をもらうが、レスリングにのめり込み、東京の安部学院高校に進学。3年生のとき、アジアジュニア選手権67kg級優勝、全日本選手権3位入賞。卒業後は日本大学に進学し、世界学生選手権3位など実績を残す。大学卒業後、センダイガールズに入門。2015年10月11日、デビュー。センダイガールズワールドシングルチャンピオンシップを4度戴冠し、現在も防衛を続けている。158cm、75kg。Twitter：@chihiro_senjo ●小橋建太（こばし・けんた） （株）Fortune KK代表取締役。’67年3月27日、京都府福知山市生まれ。’87年6月、全日本プロレスに入団。“プロレス四天王”と呼ばれるレスラーの一人。2000年6月、プロレスリング・ノアに移籍。’03年3月、GHCヘビー級王座獲得。13度の防衛に成功し、“絶対王者”と呼ばれる。’06年6月、腎臓がんが発覚するが、2007年12月、奇跡のプロレス復帰を果たす。’13年5月11日、引退。現在はチャリティーや講演会など、幅広い活動を続けている。Twitter：＠FortuneKK0327 構成／尾崎ムギ子　撮影／橋本勝美