更新日:2019年09月27日 15:37
ニュース

「消費税10%」で中小企業の大廃業が加速する

増税で景気悪化、地方経済も縮小へ

 9月20日、日本自動車工業会の豊田章夫会長(トヨタ自動車社長)は「消費税を3%から5%に引き上げた際は国内需要が101万台ほど減り、二度とそれ以前のレベルに戻っていない」と指摘したうえで、来年の消費増税によって30万台の需要減、経済効果マイナス2兆円、9万人の雇用減に繫がる可能性があると訴えた。  増税は個人の買い控えを助長する。そして増税による個人消費の縮小と売り上げ減少のなかで、中小企業の大半がさらなる経費節減、つまり自動車の新規購入中止を余儀なくされるのだ。  買い物をするたびに“罰金”を課す消費税という制度は、個人消費を縮小させてきた。  しかも、この「消費増税→個人消費の縮小→売り上げ減少→雇用や設備投資の縮小と、中小企業の廃業増加→地方経済の衰退」という悪循環は、自民党の支持基盤を破壊しつつある。自民党のある政治家はこう嘆いた。 「地元で会合をするたびに痛感するが、これまで選挙を支えてくれた地元後援会の幹部、その多くが飲食、建設、運輸など中小企業の経営者で、廃業のため次々に後援会をやめている。来年秋、増税に踏み切ったら一気に底が抜けるかもしれない」  ちなみに丸の内のある企業から聞いたのだが、廃業予定の中小企業のなかには優秀な技術を持つ製造業もあり、M&A(合併・買収)の対象になっていて、メイド・イン・ジャパンのブランドが欲しい外資、特に中国人からの問い合わせが増えているという。  来年の統一地方選と参議院選挙を控え、中小企業の大廃業への対策と消費増税が大きな争点になるはずだ。
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保

経済的安全をいかに守るか?


経済的安全をいかに守るか?実践的な入門書が発売!

 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
1
2
おすすめ記事