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「トランプ大統領に感謝したい」米中貿易戦争が日本企業にとって追い風に!?

― 連載「ニュースディープスロート」<文/江崎道朗> ―

「米中貿易戦争」が本格開戦。日本企業には追い風も!?

トランプ大統領

今年から追加関税を行うことを続々と発表。7月6日から半導体や産業用ロボット、自動車など818品目の中国製品に25%の関税を課した。トランプ政権は貿易赤字解消を公約に掲げており、貿易赤字が巨額の中国に対し制裁措置に踏み切った形だ

「トランプ大統領に感謝したい」――。経済人の会合で米中貿易戦争の話をしていたときのことだ。ある大手メーカーの社長はこう語った。 「安い人件費を目当てに中国に工場を造ったが、経費がかさみ、中国からの撤退を考えていた。だが株主の理解が得られず困っていたのだが、トランプが中国に対して貿易戦争を仕掛けてくれたおかげで、『トランプが中国を敵視している以上、生産拠点として中国を使うことはリスクがある』と説明できるようになった」  7月、米国は340億ドル、約3兆7000億円相当の中国製品に25%の追加関税を課すと発表し、事実上の“米中貿易戦争”が開戦した。トランプ大統領に対してマスコミは「保護主義だ」「自由貿易体制を損ない、世界経済全体の成長にダメージを与える」と非難一色だが、経済界はしたたかだ。  そもそもマスコミの「トランプ」報道は、当てにならない。’16年11月の大統領選においてトランプが当選すれば米国の株価は軒並み下がるだろうと言われていた。だがこの予測は見事に外れ、トランプが当選した当時1万8000ドル弱だったNYダウ平均株価は、いまや2万5000ドルを超えた(7月24日)。  この好況の背景には、トランプ政権の経済政策がある。特に昨年12月、法人税を14%も引き下げる一方で、海外に生産拠点を移した企業に対して、その資産への課税を決定した。「海外、特に中国などに生産拠点を移した米企業よ、法人税を下げるから国内に戻ってこい。戻ってこない場合は、海外資産に課税するぞ」ということだ。  あわせて所得控除も拡大するなど大減税に踏み切ったおかげで、失業率は大幅に改善し、米国民の可処分所得も急増している。  そもそも米中貿易戦争は、安全保障政策なのだ。このまま中国の経済的台頭を容認すれば、アジア太平洋は中国に支配される。それを阻止するために、中国の経済力を削ごうというのがトランプ大統領の意向だ。  昨年12月18日に公表した「国家安全保障戦略」のなかでトランプ政権は、中国とロシアを力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難した。1972年のリチャード・ニクソン大統領の訪中以来45年も続いた「親中」政策を「反中」へと転換させている。
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関税措置の発動の結果はくっきりと明暗を分けた
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