「トランプ大統領に感謝したい」米中貿易戦争が日本企業にとって追い風に!?
― 連載「ニュースディープスロート」<文/江崎道朗> ―
「トランプ大統領に感謝したい」――。経済人の会合で米中貿易戦争の話をしていたときのことだ。ある大手メーカーの社長はこう語った。
「安い人件費を目当てに中国に工場を造ったが、経費がかさみ、中国からの撤退を考えていた。だが株主の理解が得られず困っていたのだが、トランプが中国に対して貿易戦争を仕掛けてくれたおかげで、『トランプが中国を敵視している以上、生産拠点として中国を使うことはリスクがある』と説明できるようになった」
7月、米国は340億ドル、約3兆7000億円相当の中国製品に25%の追加関税を課すと発表し、事実上の“米中貿易戦争”が開戦した。トランプ大統領に対してマスコミは「保護主義だ」「自由貿易体制を損ない、世界経済全体の成長にダメージを与える」と非難一色だが、経済界はしたたかだ。
そもそもマスコミの「トランプ」報道は、当てにならない。’16年11月の大統領選においてトランプが当選すれば米国の株価は軒並み下がるだろうと言われていた。だがこの予測は見事に外れ、トランプが当選した当時1万8000ドル弱だったNYダウ平均株価は、いまや2万5000ドルを超えた(7月24日)。
この好況の背景には、トランプ政権の経済政策がある。特に昨年12月、法人税を14%も引き下げる一方で、海外に生産拠点を移した企業に対して、その資産への課税を決定した。「海外、特に中国などに生産拠点を移した米企業よ、法人税を下げるから国内に戻ってこい。戻ってこない場合は、海外資産に課税するぞ」ということだ。
あわせて所得控除も拡大するなど大減税に踏み切ったおかげで、失業率は大幅に改善し、米国民の可処分所得も急増している。
そもそも米中貿易戦争は、安全保障政策なのだ。このまま中国の経済的台頭を容認すれば、アジア太平洋は中国に支配される。それを阻止するために、中国の経済力を削ごうというのがトランプ大統領の意向だ。
昨年12月18日に公表した「国家安全保障戦略」のなかでトランプ政権は、中国とロシアを力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難した。1972年のリチャード・ニクソン大統領の訪中以来45年も続いた「親中」政策を「反中」へと転換させている。
「米中貿易戦争」が本格開戦。日本企業には追い風も!?
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio
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’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。
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