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人並みに仕事ができない人たちの苦悩「周囲に“またか”という顔をされるのがツラい」

周囲が手を焼く無自覚なグレーゾーン

 一方、その名前こそ徐々に広まれど、まだまだ正確に知られているとはいえない発達障害。傾向があるにもかかわらず、まったく自覚のないグレーゾーンも間違いなく存在している。38歳のときに発達障害診断を受けた経験のある佐藤紀子さん(仮名・46歳)は周囲にいる無自覚なグレーゾーンについて率直な思いを吐露する。 「発達障害関連でメディアに取り上げられるのは極端な人ばかり。なので、正しい認識は全然広がっていない。だから自分で気づいていない人がいっぱいいますよ。発達障害を他人事だと思っていて、自分の発達障害に気づいてない姿は、見ていて痛々しいです」  本人が大きな壁にぶつからない限り、自覚することは限りなく難しい。デリケートな問題だけに周囲はその対処に苦慮する。 「与えられたタスクはこなすけど、それ以上のことにはまったく頭が回らない部下。客先に行っても雑談は一切せず、無表情のまま話をしているようで、まったく愛想ないと取引先から苦笑交じりのクレームがあった」(43歳・メーカー) 「週末も昼夜問わずに『あの企画書はどうなった』『〇〇の件、明日までに調べてこい』といった指示をLINEしてくるうちの部長。あまりにも行動が衝動的で周囲は疲弊、ただのパワハラでなく、病的なレベル」(30歳・IT)  こういった周囲の人の発達障害を疑う声も今回の取材では多数聞かれた。不十分な知識による断定はもってのほかだが、正しい発達障害に関する知識が広がることで救われる職場は存在している。 【姫野 桂氏】 フリーライター。発達障害当事者を数多く取材。自身も発達障害当事者。著書に『私達は生きづらさを抱えている』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書) ― 発達障害グレーゾーン ―
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発達障害グレーゾーン

徹底した当事者取材! 発達障害の認知が広まるなかで増える「グレーゾーン」に迫る

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