更新日:2023年03月21日 16:15
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がんからインフルエンザまで、トンデモ医療で商売する医師たち

素人と医師の違いは…

――エセ科学信奉者の中には、医師と対等にやり合おうとする人がいますが、そんなことは可能なのか。そもそも医師免許を取るのにどんな勉強が必要なのでしょうか? 峰「医師免許を取るためには、医学部を卒業したのちに医師国家試験に受からなくてはなりません。現在の日本の医学部の多くは、世界医学教育連盟(WFME)の国際基準に従ったカリキュラムをとっています。これは米国医師国家試験受験資格審査NGO団体(ECFMG)というアメリカの医師免許の受験資格を得るために必要なカリキュラムの基準にもなっています。  このカリキュラムはみっちりさだめられています。『基礎医学』という医大の低学年で始まる科目は解剖学、生化学、生物物理学、細胞生物学、遺伝学、免疫学、微生物学(細菌学、寄生虫学、ウイルス学を含む)、分子生物学、病理学、薬理学、生理学などからなり、さらに低学年のうちから行動科学、社会医学(法医学を含む)、医療倫理学、医療法学なども学びます。  それらの基礎をもとに、臨床医学を学ぶことになりますが、これには麻酔科学、皮膚科学、放射線診断学、救急医学、総合診療/家庭医学、老年医学、産科婦人科学、内科学(各専門領域を含む)、臨床検査医学、医用工学、神経内科学、脳神経外科学、腫瘍学ならびに放射線治療学、眼科学、整形外科学、耳鼻咽喉科学、小児科学、緩和医療学、理学療法学、リハビリテーション医学、精神医学、外科学(各専門領域を含む)、泌尿器科学、形成外科学および性病学(性感染症)などが含まれています。  さらに、実技の項目として臨床技能といえるものがあり、病歴聴取、身体診察、コミュニケーション技法、手技・検査、救急診療、薬物処方および治療の実践などがあります。  そして臨床分野でのローテーション実習(ポリクリやクリクラなどといいます)を70週間程度受けないといけません。  これらすべてを受けて合格して、ようやく卒業できるのですね。そしてその後、医師国家試験に受からなければいけません」 =========  やたらと医師に反論しようとする「エセ科学推進者」たちは、これだけの知識を習得した上で反論しているのだろうか。  もちろん、商売に目がくらんでエセ科学に走る医師もいるので、一般人の私たちも、人を見る目を養わなければいけない。しかし数冊本を読んだ程度の知識では、到底医師の知識には追いつかないことが、よくわかるのではないだろうか。次回は、峰先生に「トンデモ医療にまどわされない方法」を聞く。 <取材・文/和久井香菜子>
ライター・編集、少女マンガ研究家。スタッフ全員が何らかの障害を持つ会社「合同会社ブラインドライターズ」代表。著書に著名人の戦争体験をまとめた『わたしたちもみんな子どもだった 戦争が日常だった私たちの体験記』(ハツガサ)などがある
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