がんからインフルエンザまで、トンデモ医療で商売する医師たち
ネット上から健康情報番組まで、世にあふれる「トンデモ医療」情報。それらを正すべく、ネット等で情報発信する医師たちが登場している。
病理医で薬剤師でもある峰宗太郎先生も、SNSやブログで正しい医療情報を発信している。峰先生は今、ウイルス学と病理学の研究のために米国国立衛生研究所(NIH) に勤務し、世界の医療のスタンダードにも詳しい。峰先生に、トンデモ医療について話を聞いた。
――峰先生が気になっている「トンデモ医療」にはどんなものがありますか?
峰宗太郎先生(以下、峰)「最も多いのは、がん治療に関するものです。どんなものがあるかというと、明治大学の科学コミュニケーション研究所が運営している Gijika.comという、エセ科学・エセ医学を評価しているサイトに詳しいです。
ここの代替療法の項目には、デトックス、O-リングテスト、がんもどき(がん放置療法)、ホメオパシーなどが出ています。こういった治療法はほとんどが「トンデモ医療」ですね。その他に、メタトロンという意味のわからない機械や、純金の棒で患者をなでる「ごしんじょう療法」、がんに大量ビタミンCを投与する療法などもあります。
今あげたこれらのトンデモ医療の特徴は、いずれも医師がやっている場合が多いことです。つまりトンデモ医療をトンデモクリニックで行ってビジネスをしているのですね。こういった治療をしても病気は悪化しますので、最終的には患者さんが死んでしまうか、まともな病院に紹介することになります。最終的には患者さんは亡くなることが多いので、こういったトンデモ医療を訴える人が少ないのです。かなり悪質なものと言えます。
それ以外には、インフルエンザを紅茶や緑茶で予防できると言い切る、二酸化塩素で空間除菌ができると言い切る、水素水で健康になれるなどの、科学的に考えると不当な健康関係情報も多数みられます。
これらの情報は、信頼できる確かな研究が行われていなかったり、研究で効果のほどが不明です」
――最近ですと、2月に水泳の池江璃花子選手、4月に歌手の岡村孝子さんが、白血病だと公表しました。有名人ががんを公表すると、メディアに様々な“医学っぽい解説”が出ますよね。
峰「白血病には、実際にはたくさんの種類があります。実際にどのタイプの白血病であるかわからないとその後の経過や治療の難しさなどはわからないのです。
白血病を早く見つけたからといって治療が良いわけでもなければ、発見が遅かったから即治療が良く効かないということでもありません。詳細な情報がないと白血病としてコメントはできないのですね。なので、これについては真っ当な情報発信は本来難しいことになります。
一般論として骨髄移植が必要となることは多く、現在の日本ではドナーが不足しています。そういった意味では骨髄バンクのドナーを募ることはよいと思います。ただし、ドナーになることについてもリスクはありますので注意は必要です。またドナーになると様々な負担がありますが、これをサポートする制度が日本には貧弱です。そういったところの改善も必要かもしれませんね」
トンデモ医療を商売にするトンデモ医師たち
病名の報道だけでコメントする危険
ライター・編集、少女マンガ研究家。スタッフ全員が何らかの障害を持つ会社「合同会社ブラインドライターズ」代表。著書に著名人の戦争体験をまとめた『わたしたちもみんな子どもだった 戦争が日常だった私たちの体験記』(ハツガサ)などがある
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