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<純烈物語>ホスト兼プロレスラーも候補だった「幻の純烈メンバー」たち<第11回>

歌舞伎町のナンバーワンホストが純烈へ!?

 だが、その時点で西岡がバイクをカスタマイズする店を経営しており、2店舗目も開いたばかりだった。純烈との両立についても熟考してもらったが「やっぱり先にバイク屋を始めちゃっているし、従業員もいるからそれを放り出すわけにはいかない」となった。 「いやいや竜ちゃん、それは純烈をなんとかしなきゃいけない俺も同じだよ。だからここで握手して別れよう」  構想の時点で、酒井は純烈のメンバーを「5人以上」と考えていた。2人はコンビ、3人はトリオ、4人はカルテットとここまでよく使われるし、グループ名に入っているケースも多い。 「カルテットよりも多い」と思わせる程度の理由だったが、それもあって酒井の頭の中には10人ほどの候補があった。俳優出身者以外では1998年の第11回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを獲得した金田直もその一人。 『百獣戦隊ガオレンジャー』は、酒井を含む5人の戦士に途中から1人加わった。そのガオシルバー役が、のちに映画『逆境ナイン』の不屈闘志を見事なまでに暑苦しく演じ絶賛される玉山鉄二だった。  玉山は最初ガオレンジャーオーディションで落ちたのだが、シルバーを登場させるとなった時に誰の頭にも浮かぶような存在だった。役者としての姿勢が変わっていないか確認するべく、酒井は栃木の採石場からガオレッド役の金子昇が走らせるビッグスター(スクーター)に乗って銀座を目指した。  オーディションの場にガオレッドがそのままの姿で立ち、審査員席にはガオブラックもいるというシチュエーション。結果的に玉山は合格したのだが、その所属事務所であるメリーゴーランドの森本精人社長がプッシュしてくれたと恩義を感じ、ガオレンジャー終了後にスタッフとして酒井を誘う。  森本は渡辺プロダクション出身で、沢田研二のマネジャーを長きにわたり務め、その後は吉川晃司を広島から発掘した人物だった。酒井は「あの時のジュリーはどうだったんですか? 昭和の芸能界ってどんな世界だったんですか?」という感じでガオブラックのころから取材しまくり、気心も知れていた。  そのメリーゴーランドが、ジュノンボーイも手がけていた関係で酒井が金田のプロフィールを持たされた。話を聞くと「音楽をやってみたい」というのでエイベックスに連れていったこともあったが、純烈のメンバーにはならなかった。  候補の中で一番の変わり種は美月凛音と思われる。この名前を見てピンときた方はマニアックなプロレスファンであり「ええっ!?」となる歌舞伎町に通うマダムもいるだろう。

美月凛音 写真提供:DDTプロレスリング

 ホストクラブ「ロマンス」でナンバーワンホストとなり、現在は殿堂入りを果たしている人物であり、現役のプロレスラーでもある。もっとも2人の出逢いは、まだ美月が世に出る前のことだった。 「僕がロフトプラスワンのプロデューサーをやっていた時にひょっこり現れたんです。まだ美月凛音を名乗っていない、本名の清水一星としてね。話を聞くと『僕、仮面ライダーになりたいんです』という。それでまずは、僕がトークイベントを担当していた読売新聞の記者をやっている鈴木美潮さんを紹介したんです。  鈴木さんはその過剰なヒーロー愛で記事を書いたり俳優さんたちのインタビューをしたりしていて、イベントも開いていたんです。各戦隊の赤の俳優だけを集めた『赤祭り』みたいなマニアックなものをね。それで、イベントになると一星は声を枯らして物販を手伝っていた。ああ、こいつは本気だなって思ったんです」  仮面ライダーとともに、プロレスラーにもなりたいと思っていた美月はある日、酒井にこう切り出した。「ホストをやって、そこでナンバーワンになったらその話題性でプロレスラーにステップアップできると思いました。なので、いったん就職しようと思います」  そして美月は本当に店で一番の指名を取るようになり、ナンバーワンホストの触れ込みでDDTプロレスリングにも上がるようになる。その頃には酒井も「マッスル」へ出ていたが、周囲に自分たちの関係性は言わないでいた。 「そういう話をしたら、プロレスラー・美月凛音にとって邪魔になるんじゃないかと思ったんです。相当な覚悟を持ってチャレンジしているのに、よけいなことはしたくなかった。ホスト上がりということで、なかなか認めてもらえなかったですから。でも、地道に頑張ってきた姿を見ていた分、デビューした時は本当に嬉しかったですよね」
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ホストだろうがプロレスラーになろうが…
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