更新日:2019年12月30日 02:38
エンタメ

<純烈物語>浮世離れしたものを見せたあと、普段通りのショーを…<第10回>

「白と黒とハッピー~純烈物語」第10回

とてつもないものを見たという余韻 その後に12曲を披露するプロの仕事  前川清がサプライズ登場し、それによって本当に驚いた酒井一圭が人目をはばかることなく感涙にむせる姿の生々しさは、あまりにもインパクトがありすぎた。ただごとではない状況が、エンターテインメントの世界から現実へとその場にいる者を引き戻してしまったのだ。  だが、いったん分散した集中力をすぐに戻したのも前川だった。無敵のアンドレザ・ジャイアントパンダに勝つための秘策を明かすや、何もそこまでというほどノリノリで自身の“アンモニア論”を雄弁に語った。  確かに、アンモニアのスメルを嬉しそうに嗅ぐ動物はあまり見たことがない。「ニホンオオカミのおしっこの匂いなんて、怖いぐらいで誰も近づこうとしないんだから!」と、あたかも経験者のような顔をして語る前川は、必要以上にしょんべんネタを連呼。  ダントツの大物が誰よりもお下劣だったことで、得体の知れぬグルーヴ感が発生した。完全に圧倒された酒井も止められず。袖から眺めていたスーパー・ササダンゴ・マシンは、前川の持っていく力に唸らされるしかなかった。 「あのあたりは、本当にさすがというしかなかったです。前川さんがノリノリでやってくれたことで、それまでは『NHK(ホール)でこんなことをやっていいの?』みたいな空気がどこかに残っていたのが『前川さんがあそこまでやるということは、大丈夫なんだ』って完全に変わりましたからね。  ああいうことはライブだからやれるのであって、テレビの中継があったらやらないです。テレビでやらないということは、インディーっぽさを表現できる。健康センターのお客さんとの距離感を、格式ある会場でやるとしたらどういうものかというのを考えたんです。  じっさい、NHKの人たちが視聴率と関係ないところで浮世離れしていますから、これはやれると。面白いことを一番優先するのは、じつはNHKなんですよ」  ササダンゴは’16年よりEテレの『NHK高校講座 社会と情報』にレギュラー出演しており、日本放送協会における現場の空気感をしっかりと把握していた。だから、周りが心配するようなネタも問題なしと踏んだ上で台本を書いたのだ。  考えてみれば、健康センターにおけるMCもくだらなくてバカバカしいものほど盛り上がったりする。たとえ大きなハコのきらびやかなステージになってもその距離感を変えずにやるササダンゴの発想は、なぜ純烈が支持されているかを理解できている証しといっていい。
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「それじゃあな!」颯爽と去る前川清
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

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DVD『純烈のNHKホールだよ(秘)大作戦』10月2日(水)発売

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