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<純烈物語>殺し文句は「夢は紅白、親孝行」。白川裕二郎をメンバーに誘った理由<第12回>

おい白川、おまえは米米や尾崎じゃなく、歌謡曲を歌うべきだよ!

 その場では米米クラブ、尾崎豊、TUBEなどを歌ったそうだが「この声でムード歌謡を歌ったら独自性が出るんじゃね?」との直感が酒井は働く。当時、白川が出演していた『天罰屋くれない』をはじめとする必殺シリーズの主題歌は、大御所の唄というイメージが強い。  だからこそ、映像ではなくライブで白川のようなシュッとした顔立ちが歌えば「ええっ、こんなにムード歌謡って素敵なものだったの!?」となる。そう酒井は考えた。 「おい白川、おまえは米米や尾崎じゃなく、歌謡曲を歌うべきだよ!」  マイクを通さずとも十分聞こえるほどの大声で、いきなり酒井が叫んだ。金脈を発見した時のような嬉々としたその表情とは裏腹に、白川は「この人はこんなところで何を言い出すんだ?」という目で見た。  自分自身に、そうした才能があることを気づいていなかった。人間の可能性を見いだすのは、いつも他者なのだ。それにしても、このカラオケの夜がなければ酒井は白川の声に出逢うことなく、純烈も生まれていなかったかもしれない。 「もうひとつの決め手は筋肉フェチ。白川は自分の筋肉が好きでそれを得るために体を鍛えていたんですよ。そこは仕事や義務ではなく趣味であって、誰かに強制されたり義務感でやったりするものではない。その分、続けるのが難しいわけで、世の中のほとんどの人たちがやろうと思ってもできない。白川はそれができたんです。  で、僕が純烈をやる上でターゲットにしようと思っていたおばちゃん層は、自分も美しくありたいんだけど衰えによってそれが難しくなってくる。それでも美に関してはすごく関心があるから化粧だって続けている。白川は、そのシンボルになれると思ったんです。  男女の違い、筋肉と美の違いこそあれど、欲しいものを追求する姿を重ね合わせることで支持されるだろうというね」  こうした理由から、いよいよ純烈のメンバー集めに動き出した酒井は最初に白川の自宅付近のファミレスへいく。呼び出す時点では「話があるんだけど……」と言うだけで、ムード歌謡については切り出していない。そこで、俳優としてやり続けることの限界を包み隠さず指摘した。 「台本を読んで、自分なりに理解してセリフを放ったり監督の要求に応えたり、いろんなことの中で幅という部分で難しいだろうなと思ったんです。たとえば『天罰屋くれない』に彼が選ばれる時、キャスティングが僕をマッスルに導いた東映の横塚孝弘さんという方で『酒井、白川と一緒にやっているの? 彼はどう?』と聞いてきたことがあった。 『うん、すごくいいよ。ただ、声がこもる喋り方で、ひきだしが一つしかないよね。その延長ならいいけど、何か新しいものを求められたら対応できないと思う』って答えたんだけど、それはできなくて当たり前で、できる方が特別なんですよ。そうやって横塚さんは僕にリサーチしていたんでしょう、それで白川は“沈黙の壱松”という役を与えられたんです。セリフを喋らない方がミステリアスだし、ボロも出さないで済む」  俳優として足りない部分を指摘しつつも、酒井は横塚プロデューサーに「それでも絶対に白川は使った方がいいから」と進言した。そうしたいきさつも踏まえ、ドリンクバーの1杯目で切り出した。「おまえさ、役者としての自分の今後をどう思っている?」という直球だった。
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ムード歌謡で紅白を目指して、親孝行しようよ
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