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<純烈物語>殺し文句は「夢は紅白、親孝行」。白川裕二郎をメンバーに誘った理由<第12回>

ムード歌謡で紅白を目指して、親孝行しようよ

 白川は、しばし黙り込んだあと「……キツいです」と答えた。これまでの付き合いの中でそう思っていると感じてはいたが、本人の口から出たことで「ああ、こいつはわかっているな」となり、そこから純烈構想を明かして口説き落としにかかる。殺し文句は……“親孝行”だった。 「白川は早いうちにお父さんを亡くしていて、お母さんのことがすごく好きだったんです。それで『おまえの母ちゃんも、もう70すぎているし、死ぬ前にハリケンジャーだけじゃない何かを見せたいと思うだろ? ムード歌謡で紅白を目指して、親孝行しようよ』って口説いた。  あいつは俳優の養成所に入って、舞台人の苦労や才能ある人たちに対する『こりゃ一生かかっても追いつけないわ』感を味わってきた。一途であるがゆえにほかのことを言っても理解できないだろうから、一番好きな母親の話で切り出したんです」  のちに純烈のメインキャッチとなる「夢は紅白、親孝行」は、もともと白川を口説き落とすための切り札だったのだ。もちろん、ただの方便でなく酒井自身にも同じ思いはあったが、内に秘めるものという考えで外には出さなかった。  でも、白川の心を動かすにはこれしかないと思った。ムード歌謡というコンセプトを切り出した時は、当然のごとく反応は鈍かった。俳優としても、仮に歌手に転身しても成功する自信が持てない。そこから酒井の熱量が発揮される。 「白川が自分でもキツいとわかっているから、僕は基本的にあいつがうなずくことを問いかけたんです。そして向こうの言うことも否定しなかった。そうすると人は、目の前の相手は理解してくれているんだとなって落ちるんです。  僕が否定する部分は『そんなことないよ! おまえは可能性あるだろ。おまえにはおまえの評価があるだろうけど、俺のおまえに対する評価はどうしてくれるんだよ? おまえの評価はもっと高いんだよ。だからできるだろ?』という否定。人がなんと言おうと、おまえの目の前にいる酒井一圭の言うことに対しておまえはどうなんだ?』という問いかけですよね」  家を出る前、夫人へ「今日は絶対に白川を釣ってくるからな」といちいち決意を語ってきたほど入れ込んでいた酒井としては、その場で即答が欲しかったが、結論を迫ったら逃げ出してしまう。「とりあえず、ネット上に映像とかもあるからムード歌謡がどういうものか見ておいてよ」と言って、その日は別れた。  後日、白川は純烈としてやっていくことを酒井に告げる。「やっぱり俺、親孝行したいから」の言葉とともに――。 撮影/ヤナガワゴーッ! (すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』が発売

白と黒とハッピー~純烈物語

純烈が成功した戦略と理由がここに
「夢は紅白!親孝行!」を掲げ、長い下積み時代を送ってきた純烈がいかに芸能界にしがみつき、闘ってきたのかを、リーダー酒井のプロレス活動時代から親交のあるライター鈴木健.txtが綴ったノンフィクション


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