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佳子さまのダンスで「ヘソ出し」を俗情的に訴えた見出しに思うこと/鴻上尚史

一番売れている週刊誌が俗情週刊誌の国?

 もちろん、これが完全にエロ雑誌なら分かるのですよ。女に人格はない、あるのは肉体と穴だけである、という哲学(?)に基づいた編集方針なら、電車の中吊りは拒否されるでしょうが、ありうることです。  でも、あなた、『週刊文春』ですよ。『週刊SPA!』じゃないんですから。わはははは。  男性週刊誌はグラビアで「乳首が出ているかどうか」で分かれるでしょう?  ヌードグラビアがあって、ちゃんと乳首が写されている雑誌と、何があっても乳首は見せない雑誌には、きっちりとした世界観断絶があると、僕は思っていたのですよ。  イスラム圏などの税関で問題になる雑誌と持ちこめる雑誌の違いと言ってもいいし、子供の手の届く所に置いていい雑誌と気をつけなきゃいけない雑誌の違いと言ってもいいし、電車で何の抵抗もなく読める雑誌とちょっと気をつけないといけない雑誌の違いと言ってもいいでしょう。  いや、お前、それは『週刊文春』を買いかぶりすぎだよ、『週刊文春』は大衆の俗情に訴える雑誌なんだよ、と言わたらそれまでなんだけど、そうすると、今現在、国内最高部数を誇る、一番売れている週刊誌が俗情週刊誌の国ってのは、その国の民度がそういうレベルだという証明になるわけで、なんだか、とほほな気持ちになりませんか。  同じ号の『週刊文春』は、経済産業大臣の告発だの、同僚教師をいじめた教師に関する記事だの、一応、「公序良俗」や「正義と文化」を標榜するような姿勢を見せています。  なのに「ヘソ出し」なのですよ。それは、まるで「ヘソ出し」が「公序良俗」に反するような、「正義と文化」に対する挑戦のような誤解を与えるじゃないですか。だったら、エロをエロとして謳いあげる『週刊SPA!』の方がどれだけ正直ですがすがしいか!わははははは。  どんな名作の映画を見ても、女優のおっぱいの大きさしか問題にしない男はいます。  そういう人間だと開き直ることなく、政治や経済を語りながら「ヘソ出し」を問題にすることは、ものすごく、いやらしいと思うのです。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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ドン・キホーテ走る

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