更新日:2023年04月25日 00:28
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佳子さまのダンスで「ヘソ出し」を俗情的に訴えた見出しに思うこと/鴻上尚史

週刊誌

ダンスで「ヘソ出し」を俗情的に訴えた大週刊誌のこと

 11月2日から始まる『地球防衛軍 苦情処理係』の稽古場に向かう電車の中で、『週刊文春』の中吊り広告に目が釘付けになりました。 「佳子さま 孤独の食卓と『ヘソ出し』『女豹』セクシーダンス」  一瞬、脳がポカーンとなりました。  どんなダンスを踊っているかとか、どんな構成かなんてことじゃなくて、とにかく「ヘソを出したかどうか」が問題なんだ、ということですね。  この見出しを見ながら「ああ、日本で、ミュージカルとかダンスがアートとか文化として定着するのに、あと何十年かかるんだろう」と暗澹たる気持ちになりました。  このことをツイートしたら、「皇族だから問題なんだ」なんていうリプが来ました。  でもね、例えば、絵画で考えて欲しいのですよ。  佳子さまが絵画展に絵を出品して、それがヌードだとしても、『週刊文春』は「佳子さま ヌード画出品!ヘソから乳首まで!」と書くかということです。  断言しますが、書きませんよ。だって15世紀のヨーロッパじゃないんだから。西洋の裸婦画に腰を抜かした明治の日本人じゃないんだから。  皇族が裸婦像を描いても、問題にするのはおかしいと思われるはずです。ヌード画は文化だと受け止められるでしょう。  佳子さまが小説を発表して、それにベッドシーンがあったとしても、『週刊文春』は「佳子さま 小説執筆、ベッドシーン!挿入乱発!」なんて書かないと思います。性愛の描写もまた、小説という文化・アートにとって珍しくないと思われているからです。  でも、ダンスは「ヘソ出し」を問題にするんです。そして、「女豹」のセクシーな動きが見出しなんです。  それはまるで、映画を見て、どんなドラマかとか、どんなテーマとか、どんな演技かなんて一切問題にしないで「おお!乳首が見えた!パンツが見えた!」と騒ぐ人と同じです。  通常、そういうのは、「俗情に訴える」という表現になります。 『週刊文春』は、呆れるぐらい俗情に訴えた見出しを選んだのです。
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一番売れている週刊誌が俗情週刊誌の国?
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