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自衛隊は“便利屋”ではない。災害派遣された自衛官のタメ息

ヘリ救助でもっとも難しい「ペットも一緒に助けて」

自衛隊

※写真は陸上自衛隊Facebookより

 台風19号の災害でも、河川の決壊により屋根の上に取り残された人々の救助で自衛隊や自治体、消防のヘリが活躍しました。地震や津波の予想は難しいですが、台風や豪雨はある程度は予想できます。台風19号では、気象庁は異例の早さで緊急会見を開き、「命を守る早めの対策」を呼び掛けました。  平和で安全な日常に慣れた私たちは、警告を受けても「自分だけは大丈夫」と考えてしまいます。巨大台風がくると予想されても、ピンポイントで「あなたのことよ!」と言われないと、「家族を連れて避難」する気持ちになれないと聞きます。  救助する側は現場をどう見ているのでしょうか? 東日本大震災で自衛隊の救難ヘリパイロットとして実際の現場で救助の任務についていた元自衛隊員に話を聞きました。 「市街地での救助は電線などの障害物が多く、目視確認しながら注意深く行う必要があります。障害物やヘリのダウンウォッシュの強さを考えながら適切な高度を選びます。高度を下げての市街地の作業は、慎重に慎重を重ねないといけません」  これは、ヘリは万能ではなく近づけない場所や条件があるということです。 「救助現場でもっとも難しいのはベランダや屋根に出られない人の救助です。まず、ホイストでどこかに隊員が下りた後、救助する人とコンタクトを取り、どこから上げるかを考えます。お年寄りや妊婦さん、子供さんをそういうかたちで救助することがあります。  もっとも難しいのはペットを一緒に助けてほしいと言われた場合ですね。これは考え込みます。動物はヘリや見知らぬ隊員に怯えています。暴れられると落下する危険もありますから」  平成27年の関東・東北豪雨では鬼怒川が決壊し、屋根の上に避難していた2人と2匹の犬を自衛隊が救出しました。ペットの場合は非常時の喧騒やヘリの轟音、見知らぬ人に怯えて普段と違う行動を取る可能性もあり、救助活動には人間以上に危険が伴います。非常時の救助活動は熟練の隊員でも命懸けなのだということをもっと知ってもらいたいと思います。大事なペットのことを考えると事前に安全な場所への避難が無難です。  また、人命優先の現場ですから報道ヘリは救難ヘリの活動の妨げにならないようにしてほしいとの意見も聞きました。当然のことですよね。

想定外の災害に対抗するためには早めの避難を心掛けたい

 自衛官は勇敢で、辛い災害現場でも不平不満を言わず黙々と救助や災害復旧活動をしてくれます。しかし、「お子さん、お年寄り、ペット」などの大切な家族の「命を守る」ために、早めに避難することで現場のリスクは著しく減ります。  土砂災害に備えた「ダムや堤防」は効果的でした。転ばぬ先の杖です。まずは、自衛隊を呼ばなくてもいいようにしましょう。自衛隊は便利屋ではないし、すべての現場から被災者を救助できるわけじゃありません。防災から減災へ。「命を守る」のはまずは「自助」です。私たち一人ひとりが自分でできることはする。つまるところ、民度とか国力というのは国民のそういう姿勢から始まる問題ではないかと思うのです。
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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