芸能界での縄張り争いとは別方向の仕事を増やす
――「腐りキャラ」がフィーチャーされる一方、相方の澤部さんは「バラエティの現場では、岩井もリアクションも頑張っている」と語っています。一応、淘汰されないように頑張る部分もあるのでしょうか?
岩井:いつも真面目に取り組んでいるつもりです。ただ、おおげさにリアクションしなきゃいけないと思っているわけじゃなくて、本当に驚いたところで驚いているわけです。だから、おいしくないものを「うまい」とは言わない。だから、食レポの仕事は来なくなりましたけど。
――いわゆる、芸能界の縄張り争いに参加するつもりはなさそうですよね。
岩井:ないですねえ。
――エッセイを書いたり、同人でコントCDを作ったように、さまざまな仕事もされていますが、今後、芸能界での縄張り争いとは別方向の仕事を増やそうという気持ちはあるのでしょうか。
岩井:それはありますね。芸人になることを母親に話したときも、「サラリーマンほど安定していないし、一生できる仕事じゃないけど、いいと思うよ」って言われたんですよ。ただ、芸能界もどうなるかわからないじゃないですか。
だいたい、人が築いたジャンルの高みを目指すのが好きじゃないんです。例えば、広い迷路のスタートとゴールが真隣にあって、一斉にスタートするとして、だいたいはバーッと迷路を進んでゴールを目指すと思うんですけど、俺はスタートとゴールの間の壁を壊すことに力を注ぎたいんですよ。
――もしかすると、素直に迷路を進んだほうが速い可能性が高いとしても。
岩井:そうですね。なんなら、壁は一生壊れない可能性もありますけど。
――芸能人としての仕事以外でいうと、これだけエッセイを書ける文章力と、ラジオなどで語る世界観があれば、素晴らしいライトノベルを書ける可能性があると感じたのですが、すでにオファーは来ていますか?
岩井:いや、来ていないです。そもそも長い文章を書いたことがないんです。このエッセイも、最初は5000字で書いたんですけど、いらない部分がいっぱいあると感じて。ただ付け足して5000字にするのは違うと感じて、2500字にしたら急にやりやすくなったんですね。まあでも、今だったら5000字でも書ける可能性はありますけど。
――ラジオで“能力者”や“末裔リスナー”を募集するコーナーがあるなど、いわゆるアニメやゲーム的な世界観が強く、キレのあるコメントをする岩井さんだけに、ライトノベルでいいセリフをたくさん書けると思います。
岩井:ああ~、書けると思います。ずっと、いわゆる厨二病なので、そういうセリフは書けると思いますね。ただ、その質問に対する答えと違うかもしれないんですけど、セリフにカギ括弧を付けたほうがいいのか、付けないほうがいいのかとか全然わからないんですよ。
――文章の内容ではなく、形式の話ですね。
岩井:基本的に自分のしゃべり言葉は括弧、思ったことは二重括弧にしているんですけど、二重括弧をつけない場合もあるじゃないですか? 単純にルールがわからないから、書いていないというのはありますね。
――ルールがわかれば、書いてみる可能性もあると。
岩井:そうですね。与えられたルールの中でなにかを競うことは、わりと好きかもしれない。
――仮にライトノベルを書いたとして、アニメ化して好きな声優に演じてもらったら面白いかもしれません。
岩井:めちゃくちゃいいですね。ただ、自分が書いたストーリーがアニメになるよりも、自分がアニメーターとして描いた絵が動くほうが感動するかもしれない。そもそも絵が動いているアニメーションが好きなんですよ。……今、改めて思ったんですけど、あんまり人を信用していないので。例えば、物語を書くじゃないですか? その後を誰かに委ねると、完成したあとで「ここは違うんだよな」と言いたくなりそうです。