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“イギリス版トランプ”の実力は本物だった! EU離脱で経済危機に…

総選挙でサッチャー首相以来の大量議席獲得!

ボリス・ジョンソン首相 “イギリス版トランプ”の実力は本物だった。12月12日、ボリス・ジョンソン首相率いる保守党が英下院総選挙で圧勝。’17年の前回選挙から50議席近く伸ばして、過半数(326議席)を大幅に上回る365議席を獲得したのだ。  争点となったのは、もはや食傷気味のEU(欧州連合)離脱の是非だ。’16年の国民投票で52%が離脱を支持し、’17年からメイ首相(当時)のもとでEUとの離脱交渉が本格化。しかし、英領北アイルランドとアイルランド共和国との国境問題がネックとなって、交渉期限は何度も延期された経緯がある。  英国が離脱すれば、自然と北アイルランドもEUから外れるが、国境を接するアイルランドとの自由な往来が妨げられ、混乱をきたすとしてアイルランドをはじめEU側が「北アイルランドだけをEUの単一市場&関税同盟に残すバックストップ(安全策)を盛り込むように」と要求。  英国がその要求を突っぱねて“合意なき離脱”のリスクも高まったが、メイ氏の後釜となったジョンソン首相がウルトラCを決めて事態は一変する。今年10月に単身、アイルランド首相と交渉して、「当面、北アイルランドはEU単一市場のルールに従うが、最終的な決定権を北アイルランド議会に委ねる」という民主的な手続きを盛り込んで、国境問題を解決してしまったのだ。  今回の選挙では、その剛腕が評価された一方で、ライバルの自滅も追い風になったという。英国在住の元為替ディーラーで今回の選挙をウォッチし続けた松崎美子氏が話す。 「保守党の365議席は、サッチャー首相時代に376議席を獲得した’87年の総選挙に次ぐ、歴史的大勝利です。その点で、英国民がボリスにEU離脱交渉を一任したのは間違いありません。ただし、背景には野党第1党である労働党の大敗があります。  前回選挙から60議席近く減らしての203議席止まり。それもイングランドの中部・北部・北東部と労働党が100年以上も牙城とし続けた選挙区をことごとく失っています。これらの地域には炭鉱で栄えた町が多くあるのですが、’80年代にサッチャー首相が主導した新自由主義革命で不採算に陥って炭鉱閉鎖に追い込まれた歴史があるので、一貫して“反保守党”だったのです。  にもかかわらず、労働党が票を伸ばせなかったのは、古くからの支持者に対する支援策を打ち出してこなかったから。それどころか、今回の公約に掲げたのは『電気・ガスなどの公共事業を国有化する』という、時代錯誤も甚だしい政策でした」
ボリス圧勝で見えた英国紳士たちの憂鬱

今回の選挙の関心の高さを証明するように「こんな行列、初めて見た」というツイートが溢れた

 実際、英国在住ジャーナリストの木村正人氏は「イングランド中部の旧炭鉱街の選挙区を取材すると、『コービン(労働党党首)に期待したが、あいつは我々の怒りを理解しようとしなかった』と憤りの声が溢れていました」と話す。こうした労働党の自滅に加えて、「残留派の分裂」も保守党の追い風になった。 「労働党のほか、今回48議席を獲得したスコットランド民族党(SNP・前回35議席)と11議席の自由民主党(同12議席)が残留派だったにもかかわらず、各党はバラバラ。  下院総選挙は小選挙区制で各選挙区につき一人しか当選しないので、残留支持票が分散した結果、保守党に有利に働いたわけです。いまだ世論調査では離脱支持の国民と残留支持派は52対48と拮抗しているので、票をまとめられれば残留派がもっと議席を伸ばしたはずです」(木村氏)  そんな棚ぼた的勝利に沸く保守党だが、実はいまだに難問が山積だ。 「SNPが一気に議席を増やしたことは、ボリスにとって頭の痛い問題でしょう。なぜなら、SNPはスコットランド独立の是非を問う2度目の住民投票実施を公約にしています。ボリスは『絶対に認めない』と言っていますが、有権者から支持を得て大幅に議席を伸ばした党の要求をいつまでも無視できるのか……?  また、英国議会の定数650議席のうち18議席が北アイルランドに割り当てられていますが、この地域では南北アイルランド統一を目指すシン・フェイン党を中心としたナショナリストが多数の議席を獲得しました。  南北統一により、EU残留を目指すという主張が有権者に支持されたかたちなので、最悪のシナリオでいえばイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドからなる連合王国の崩壊が現実化する可能性さえあります……」(松崎氏)
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離脱開始後には英国経済が危機に…
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