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コメの高騰は誰のせいか?専門家が指摘する「3つの要因」

 コメ価格が高騰するなか、政府はついに備蓄米の放出を決定した。それでも価格が下がるのは数カ月後になりそうだ。ギリギリの生活を送る貧困家庭の苦境から高騰の要因まで、パニックになった日本列島を取材した!

異業種参入や農政不信…コメ高騰の犯人は誰だ!?

 なぜコメはここまで高騰したのだろうか。要因はさまざまだが、大きく3つに集約される。順番に見ていこう。

要因①業者間の取り引きが増えたから

 ’24年産の主食用コメに関しては収穫量が増えたのに集荷量は前年より21万tも少なく、それが“消えたコメ”と騒がれた。  そこに「投機的な動きがある」と指摘するのは米穀店を営む米流通評論家の常本泰志氏だ。
激震[貧困家庭の米騒動]

米流通評論家・常本泰志氏

「卸業者のなかには、年間契約ではなく、安いコメを狙ってスポット取り引きをする業者がいます。JAが卸売業者に販売する相対取引価格は現在、2万4000円台(60㎏)ですが、現在のスポット取り引きの相場は4万~5万円ほど。つまり、3万円くらいで産地集荷して仕入れたコメが5万円で売れるのです。米穀店に販売するよりも、業者間で取り引きするほうが儲かるので、昨年に最高益を更新した卸売業者もあります」  さらには、消費者に直販する生産者も在庫をストックしているという。それらが消えたコメの行方だが、苦境に立たされているのは、量販店などの小売事業者だ。 「価格が高騰しているので、これまで3000万円で仕入れていたのが、いまは同じ量でも倍の金額が必要。銀行にも融資してもらえず、3か月間売って、その売り上げで次の3か月分を仕入れるという事業者も少なくない」(日本米穀商連合会の相川英一氏)

要因②農水省の試算や需給管理が甘かった

激震[貧困家庭の米騒動]

宮城大学名誉教授・大泉一貫氏

 過度な生産調整をしてきた農政にも問題がある。農政に詳しい宮城大学名誉教授の大泉一貫氏はこう指摘する。 「’18年に減反政策が撤廃されてからも、農水省は実質的に生産調整を続け、米価を維持するために需給を非常にタイトに管理してきました。だから需要が少し増えただけでも、需給のミスマッチが起きてしまうのです」  そもそも供給量が農水省の想定を下回っている可能性もあるという。 「農水省は、’24年産の作況指数を前年並みの101としていますが、実態を表しているかは疑問です。気候変動や虫害などにより、生産量と流通量との間にギャップが生じている可能性もある。農水省の発表する数字は信用できないという農政不信が背景にあり、ビジネスをしている人たちが独自にコメを集めているのでしょう」(大泉氏)  そして、供給を安定させるためにも、生産調整のあり方を変えるべきだと提言する。 「農水省は主食用米と加工用や輸出用とを分けることで生産を調整していますが、同じコメなのだから一律に自由に生産させて、生産過剰分を輸出に回すべきです」(同)
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要因③業務用確保で需要が大衆ブランドに集中した
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