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イギリスとEU「合意なき離脱」リスクの恐怖

 ビッグベンの鐘の音が鳴り響くと同時に、沸き起こる大歓声。ロンドンの議会広場にはユニオン・ジャックがはためき、集まった人々は英国国歌を口ずさんでいた――。2月1日午前8時(現地時間1月31日午後11時)、英国がEU(欧州連合)から離脱した瞬間だ。 イギリスとEU「合意なき離脱」リスクの恐怖「これは終わりではなく、始まりだ」  その1時間前にはボリス・ジョンソン首相が、動画でこのように演説。EC時代を含めて47年間、欧州共同体の一翼を担ってきた英国はその役割を終え、「自治の手段を取り戻し、英国のすべての人々の生活をより良くするときが来た」とメッセージを送った。  これに呼応するように、各地でユニオン・ジャックカラーのスーツやネクタイ、帽子などを身にまとった英国紳士・淑女たちがパーティを開催。英国産のビールや英国産のつまみを片手に、新たな門出を祝ったという。  まさに、祝賀ムード一色……かといえば、実はそうでもなかったとか。ロンドン在住のトレーダーとして欧州情報を発信し続ける松崎美子氏が話す。 「ウエストミンスターの議会広場ではEUからの強硬離脱の姿勢を示し続けたブレグジット党主催のセレモニーが開かれたので、当日は離脱支持者が集まって大盛況でした。昨年12月の下院選挙で離脱支持票の多かった地方の公民館などでもパーティが開かれましたが、実はお祝いムードに浸っていたのは一部の人。  街中を歩いても『ブレグジット記念セール』はやっていないし、日付が変わった後はブレグジットを話題にする人もほぼいません。そもそも、直近の世論調査でも、53%の国民は残留を支持しているんです。それでも不満を漏らす人が少ないのは、何度もEUとの交渉期限が延長されて3年半もの間振り回されてきたから。  とりあえず早く白黒つけてほしかったので、1月31日の離脱で『ホッとした』と話す残留派が多いんです。いまだ、世論が真っ二つに割れているのは間違いありません」  それを象徴するような映像もブレグジットの瞬間に流れたという。 「ボリスを陰で操り、昨年12月の下院議会選挙で保守党を圧勝に導いた上級アドバイザーのドミニク・カミングスが離脱の瞬間をどう迎えるのか撮影しようと、報道陣が追い掛け回すシーンが民放で流れたのです。カミングスはまったく離脱の余韻に酔いしれることもなく、ひたすら『撮るな!』と激高(苦笑)。もともと人前に出るタイプではありませんが、お祝いムードは皆無でした」
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ボリス政権が進める産業振興がFTA交渉のネックに
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