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「代わる人がいない」という理由だけで、死に体の政権が続く日本/倉山満

「黒田をクビにしろ」など、日本を滅ぼしたいのか

 相変わらず間違った言論が蔓延っている。「円安でモノの値段が上がるのに給料が上がらない! 今すぐ黒田をクビにしろ!」などと、怨嗟の声が広がる。
Rishi Sunak becomes new PM スナク氏

10月24日、与党・保守党の党首選に勝利し、翌25日にイギリスの新たな首相となったスナク氏は首相官邸前で初の演説を行い、経済危機に取り組むことを表明した 写真/PA Images・時事通信フォト

 本欄では、何度も「黒田東彦日銀総裁の後任は、正しい経済政策をわかっている若田部昌澄副総裁の昇格以外にありえない。黒田総裁の今の政策は正しく、デフレ脱却まで続けるべきだ」と言い続けてきた。  長い長いデフレに苦しむ日本が、黒田日銀の金融緩和政策により、消費増税によるブレーキのような紆余曲折はあったが、ようやく不況脱出の兆しが見えてきた。それを、この瞬間にやめてしまえと絶叫する。そいつらは、日本を滅ぼしたいのか。

金融緩和を今やめれば、永遠の生き地獄だ

 金融緩和の目的は、円安誘導、物価上昇だ。物価が上がらないと、売り上げも伸びないので、給料が上がらないからだ。  普通の生活苦を思い出せばいい。給料が上がる前に物価が上がるので、生活が苦しい。これがインフレ不況だ。インフレ不況は少し我慢すれば景気が良くなる。それに対し、デフレ不況は、いつまでたってもモノの値段が上がらないので、売り上げも伸びず、給料も上がらない。そして値下げをしないと売れないので、ますます給料が上がらない。永遠の生き地獄だ。  さて、デフレに戻りたいか?

問題は黒田日銀総裁ではなく、政府

 黒田日銀は、これ以上ないほどよくやっている。問題は政府だ。ここでコロナ規制撤廃と減税、特に消費減税をぶち込めば景気は爆上げだ。これをやれば岸田文雄内閣は間違いなく長期政権となろう。ところが、減税と規制緩和だけはやらせたくない勢力に、羽交い締めにされている。  来年4月に正副日銀総裁が交代、年内には山場を迎えるが、ここで間違うと岸田内閣は短命、下手すれば自民党も政権失陥だ。岸田内閣や自民党がどうなろうと知ったことではないが、国民が地獄に落とされてはたまったものではない。謬説を無視、正しい経済政策を、岸田政権が採る。さもなくば、まともな野党がとって代わってくれる。これが健全な立憲政治だ。  謬説をまき散らす者の中には、立憲政治の本場のイギリスで、リズ・トラス前首相が「減税と規制緩和」を掲げて史上最短の政権として放逐されたことで、「増税と規制強化の勝利」を絶叫する輩もいる。これが大メディアだから困り者だが……。
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イギリスの失敗を日本にそのまま持ち込むなど、算数ができないのか
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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