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テレワークはラブホですべし。仕事が異様にはかどる/古谷経衡

サービスタイムが適度な緊張を生む

 そこでラブホの出番である。日本のホテルや旅館は、画一的基準に嵌められすぎている。15時チェックイン、翌10時チェックアウト、というのが普通である。要するに「昼間は外出していることを前提とした寝る場所」以外、極論すれば我が国の宿泊サービスはその用を供していないのである。これでは全然テレワーカーの居場所としては不適格だ。  会社に通勤する代わりにテレワークするのだから、それは当然、概ね午前9時~午後5時くらいの範囲を代替するものでなければならない。ところがこの時間、普通のホテルや旅館はチェックインそのものを受け付けていない。この時間をホテルや旅館で過ごすためには「連泊」する必要がある。これではあまりにコストパフォーマンスが悪い。  ところがラブホは、この問題をすべて解決してくれる。朝6時~9時にチェックインし、夕方5時から8時にかけてチェックアウトできる(総計13時間程度利用)、昼間帯利用のサービスタイムを設けているのはラブホテルしかない。つまり、ラブホのサービスタイムは、我が国の労働者に於ける平均的な勤務時間のほぼすべてを代替できる唯一の空間なのである。  そして嬉しいことに、現代的ラブホテルのほぼ全てにおいて、サービスタイムは宿泊よりも断然に安い。東京都内、大阪府内でもラブホのサービスタイムは概ね5000円程度。郊外に至っては3000円台も珍しいことではない。ラブホテルにとってサービスタイムは、「休憩(2-3時間)」「宿泊(夜~翌朝)」の間隙を突いた高回転を生む願ってもない営業時間帯なのである。  ラブホの室内は至極快適だが、自宅とは完全に違っている。読みかけの漫画は床に散らばっておらず、冷蔵庫のアルコール飲料は有料だ。「しがらみ」の誘惑に打ち勝ち、テレワークを前進させるすべての要素がラブホには整っている。Wi-Fiは無料だ。確かにテレビを付ければVOD(ビデオオンデマンド)が無料で付帯するので「しがらみ」が全くないとは言わないが、自宅よりはるかに少ない。仕事がはかどって仕方が無い。  ラブホのサービスタイムはテレワークに最も適していると筆者は断言する。そしていかに新型コロナ渦とはいえ、資本家が労働者にテレワークの命令を出すのであれば、労働者は当然の権利としてこのラブホのサービスタイム利用料金の領収書を資本家に全額経費として認めさせるべきである。  なにせラブホテルは一般のホテルや旅館と違ってチェックアウトが厳格だ。1分でも過ぎれば高額な延長料金が付加される。それもこれもホテル側が客室の高回転を狙っているためだが、この厳格なチェックアウト・タイムも、適度な緊張をもたらしてくれて仕事が異様にはかどる。日本の大企業が新型コロナ渦を理由に労働者にテレワークを命じるのなら、それは自宅ではなくラブホテルが相応しいであろう。この原稿も、もちろんラブホで書いている。(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/文筆家/評論家。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
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