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<純烈物語>「大丈夫?」は不安感ではなくワクワク感 マネジャーの目から見たメンバーとは?<第46回>

一番芸能人らしい、末っ子後上

 年上ときたら、お次はメンバーでもっとも年下となる後上について語っていただこう。山本との年齢差は13歳と、一回り以上になる。  後上自身が「考え方が合理的」と分析するように、山本から見てもそこは同じに映るという。他者から見ても同様の人物像であるのは、人間として表裏がない事実を証明している。 「後上が一番芸能人らしいですよ。それは、オーラとかじゃなく芸能人として演じきれるという意味でね。これはいい意味でとらえていただきたいんですけど極端な話、嫌いなものでも芸能人というスイッチが入ったら好きと言えるタイプで、それほど切り替えがキッチリできている。プロとして演じられるという意味では、それは才能じゃないですか。  そこは酒井と同じで計算高さも備わっている。合理的な考え方で生きてきたから、物事を数値化して判断できるんでしょうね。よけいなものを省くクールさっていうんですか。それを機械的に受け取る人もいれば、物事を合理的に進める力量として見る人もいる。僕は、そういう人間性はいい部分だと思って見ています」  メンバーで唯一、タレント経験がないまま純烈に入った男が、実は山本の目にはもっとも芸能人らしく映るというのも面白い。合理的な考えのもと自分で答えを出す、つまりは物事を自己完結でまとめられる。  人を巻き込むことなく、自分で答えが出せるから「他人に興味がないんじゃないか」となる。それが、末っ子の後上をメンバーがイジる恰好のネタとされる。 「おまえは愛というものを知らないだろう? あれほど親御さんが愛情を注いで育てたのに、息子にはない。愛を知らずして愛の唄を歌うって、どういうことや」  まったく同じことを言っても、根底に“後上アゲ”の意図があるのとないのとで伝わり方は真逆となる。純烈のファンはそのやりとりの行間を読み、呼吸を楽しんでいる。  後上が「そんなことないですよ!」と反論する姿までが、一つの作品となっている。演じていながら、裏表を使い分けることなく生身の自分で勝負しているからこそ成立する純烈ならではの妙。誰よりもそれを楽しんでいるのが、実は山本なのかもしれない。  何度となく、純烈のマネジャーを続ける上で「楽しい」という言葉が出てきたが、それだけで「こいつらに懸けてみよう」とはならなかったはず。面白さを超越したところにこそ、人間の心を揺さぶるものはあるからだ。山本にとって、それに当たるのが白川裕二郎だった。 「白川はねえ……歌に関してこれまで何度も何度もカベにブチ当たって打ち砕かれてきたんです」  これまで嬉しそうに純烈を語っていた山本の目線が数秒間、虚空をとらえた――。 撮影/ヤナガワゴーッ!
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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