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【3・11特集】震災報道からメディアの在り方を考える 生死を左右する情報リテラシー

 東日本大震災直後、あらゆるメディアが被災地の状況を伝えた。テレビでは震災特番が組まれ、津波による甚大な被害の様子、福島原発の予断を許さない状況が、繰り返し流され、“震災うつ”となる人も現われた。週刊誌では、原発の危険性を指摘する記事に溢れ、なかには「風評被害を助長する」「恐怖心をいたずらに煽る」といった、いき過ぎた報道もみられた。また、ツイッターをはじめ、各SNS上でも震災・原発情報が飛び交い、多くの有名人も支援情報の拡散に努めた。しかし、その中にはデマとも言える情報も含まれており、SNSの速報性・拡散性が評価されるとともに、利用者の情報リテラシーが問われた。

 SPA!でも原発関連の報道をしてきたが、震災をとおしてメディアの在り方を問う特集も繰り返した。当時の各メディアの報道を振り返りつつ、震災という非常時にどうやって情報を収集し、判断し、行動すればよいのか参考にしていただきたい。

◆柔軟にネットと連携した媒体の勝ち。震災が報道の在り方を変えた

 有象無象の情報の海の中で何を頼りにすればいいのか、5人の識者が各メディアの震災報道を徹底批評。メディアジャーナリストの津田大介氏は「多数の紙媒体がこれを機にツイッターを活用し始めました。炊き出し情報等の生活に直結した情報は、ネットのほうが小回りが利く。この未曾有の事態で、各媒体はこぞって、ITがライフラインに直結する情報インフラだ、という印象を強くしたのでは」と、既存のマスメディアが震災を機に変化したことを指摘。その中でも、ニコニコ動画が行った、東電会見のネット中継やNHKとフジテレビの地震特番の同時放送を評価。「報道チームがないなかで試行錯誤しつつ独自の震災特番も始めた」と、振り返った。

※「震災報道[アテになるメディア]判定会議」(4月26日号)より
⇒ http://nikkan-spa.jp/3177

◆揚げ足取りどころか足を引っ張る記事が多いのは残念

 原発報道では、「反原発」「原発擁護」と二項対立にみえたが、各メディアの個性が出る記事も多く見られた。過剰な煽り記事でヒンシュクを買った記事から、「さすが東スポ1ミリもブレない」と評価される記事まで、様々な記事があったが、SPA!では6人の目利きにベスト&ワースト記事を選んでもらった。そこで、ワースト記事として多く指摘されていたのが、「菅首相叩き」の記事だ。

 作家の森達也氏は「今はほとんどの週刊誌が批判してますよね。『菅直人、あんたという人は』(『週刊現代』4/2号)でも、『「ただいまから福島に行って参ります」と芝居がかった表情で宣言』って、別にいいじゃない。体制批判はメディアの大切な機能だけど、揚げ足取りどころか足を引っ張る記事が多いのは残念」と、呆れ気味。エジプト国籍を持ち、数年間の渡米経験もあるフィフィさんも『卑怯者宰相・菅直人よ、ならば全原発を止めてみせろ』(『週刊ポスト』5/27号)について、「菅さん批判はもううんざり。わざわざ雑誌がやる必要ない」とバッサリ。『週刊文春』5/5・12号の「『危機に強い総理』は誰だ!」も同じく不毛な記事だと嘆く。「誰が首相をやっていても一緒。これだけの大震災の対応を完璧にこなせる人なんていないんだから、こんな議論は無意味だよ」と嘆いていた。

『週刊現代』4/2号より

『週刊現代』4/2号より


※震災記事[ベスト&ワースト]大賞(6月28日号)より
⇒ http://nikkan-spa.jp/18035

◆「求められる支援も変化する」 地元紙が伝える情報の重要性

 東日本大震災から半年以上が経ち、全国紙が伝えるニュースは、“現在進行形”の福島原発事故と放射能の影響、国の復興財源の話が中心となった。そして、時折伝えられる被災沿岸地域の港が操業を再開、水揚げといったニュースに復興の兆しを見いだし安堵した。が、「それが一番、怖い」と語るのは、大船渡市・陸前高田市などをエリアとする地元紙『東海新報』編集局長・佐々木克孝氏だ。

「復旧が一歩一歩進むなかで、生じる問題もある。ここからが始まりなんです。だからこそ、皆さんの関心が他に移ること、記憶から薄れていくことが怖いんです」

 さらに、求められる支援と現実にズレがあることを明かし、被災地からの情報発信の必要性について語った。

「被災直後、ちょうど新入学の時期にあたり、全国からランドセルが支援されました。しかし、結果として、新1年生一人あたり7つのランドセルが届いたんです。ノートや鉛筆も、一生分使えるほどのものをいただきました。ありがたい話ではありますが、ある意味、これは街のカバン屋さんや文房具屋さんにとっては、営業にかかわる問題になる。今回の震災からの復興は、被災地の努力だけでなしえることはできません。その意味でも、的確な情報を発信していくというのも、復興を進めるうえでの課題と言えるでしょうね」(同)

※「被災地「地元紙」が見た復興を阻む意外な大問題」(10月4日号)より
⇒ http://nikkan-spa.jp/66725

◆放射線の独自計測報道には細心の注意を

 政府や東電発表が信頼性に欠けると判断する人が増え、需要が高まった放射線の自主計測。メディアも、独自の計測記事を掲載したが、その数値には“煽らない派”と“煽り派”で大きな隔たりがあった。いったいなぜこんなことになったのか?

 物理化学が専門の小波秀雄京都女子大学教授は、次のように話す。

「空間放射線量を計測するときは、β線はカットしなければなりません。もしカットしていなければ、当然大きな数値が出てしまう。また、同じメーカーの線量計でも、1台1台に個性があり、高い数値が出やすいものもあるんです。もちろん、計測する回数も多いほうがいい。1μSv/時を下回るような低線量だと、多少の違いは誤差の範囲です。だから、できるだけたくさん計測し、平均値を出さなければならない。こうした点を踏まえて計測した数値を出すよう心がける必要はあります」

 どうやら、各誌で結果が異なるのは、測定法を誤っていたり、線量計をきちんと校正していないことが背景にあったようだ。SPA!を含む各誌の数値を伝えたい思いが先行しすぎ、科学的かつ客観的に検証するために不可欠な、計測の背景に関する記述が不足していた。

※「放射線[ガイガーカウンター測定報道]のウソ」(8月9日号)
⇒ http://nikkan-spa.jp/166453
※「内部被曝測定装置はどこまで信用できるのか?」(8月30日号)より
⇒ http://nikkan-spa.jp/48577

◆「善意の行動で人が死ぬ」 SNSを駆け巡ったデマ拡散

荻上チキ

荻上チキ氏

 地震発生時から飛び交うデマの数々。「地震が起きた時、社内サーバールームにいたのだが、ラックが倒壊した。腹部を潰され、血が流れてる。痛い、誰か助けてくれ(中略)」地震発生直後、ツイッターに投稿されたこの“ニセ”SOS。本物と信じたユーザーがリツイートして拡散し、救急車がオフィスビルへ駆けつける騒ぎにまでなった。他にも「(自国にも)放射能が飛来する」というデマによって、韓国や中国で検挙者が出た。

 評論家の荻上チキ氏は、震災時に拡散されたデマを振り返り「仮に善意に基づいた“勘違い”だったとしても、それによって救援の業務が滞り、助かるはずの人が助からない場合もあるわけです」と、その悪質性を指摘。さらに、ツイッターのリアルタイム情報に助けられた人も多かった一方で、その速報性が「デマ拡散速度」を速めたことについて「有名人がむやみにリツイートすることで、爆発的に広まったりもした。善意の行動で人が死ぬこともあるわけです。人の命に関する情報デマならば、より悪質で注意が必要になります」と注意を促した。 

※「デマ発信の不届き者は逮捕される」(4月5日号)
⇒ http://nikkan-spa.jp/166382

◆もはや洗脳! 震災時以外もメディアを疑え

 福島原発後に高まった反原発運動。事故が起きてからはじめて原発の危険性を認識した人も多かったはず。なぜなら、「原子力=安全、クリーン」と思い込んでいたからだ。それは「原子力啓発教育」が徹底して行われてきた成果だ。今、改めて子ども向け原発啓発教育の証であるポスターを眺めると、かわいらしいキャラや無邪気すぎるコピーが不気味さを醸し出しており、戦慄をとおりこして笑えてくる。

 何も知らない子供たちに原発推進のポスターを描かせる「原子力ポスターコンクール」や、中学生向けエネルギー情報誌『Dreamer』配布など、原発教育は、年々規模を拡大する形で続けられてきたことをご存知だろうか?

 中学生向けに作成された原発啓発副読本では、「原発周囲は放射線レベルが高く人体に影響がある?」「欧州では原発廃止国が増えている?」などの問いに「すべて“No”です」と豪語している。また、ポスターコンクールの入選作は、「原子力は地球を守る」「ぼくたちのみらいをはこぶ原子力」「原子力でみんな笑顔」といった、原発礼賛作品がずらり。

 これらは、すべて経済産業省と文部科学省が中心となり行われていた。

※もはや洗脳!![子供向け原発教材]のヤバい中身(5月17日号)より
⇒ http://nikkan-spa.jp/165549

<構成/日刊SPA!取材班>




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