「善意の行動で人が死ぬ」 SNSを駆け巡ったデマ拡散
―[デマ発信の不届き者は逮捕される]―
地震発生時から始まり、今なお飛び交うデマの数々。枝野官房長官が記者会見で注意を促し、中国・韓国では検挙者も出る事態に発展している。今後、日本ではどうなるのか――
<地震が起きた時、社内サーバールームにいたのだが、ラックが倒壊した。腹部を潰され、血が流れてる。痛い、誰か助けてくれ(中略)>
地震発生直後、ツイッターに投稿されたこの“ニセ”SOS。本物と信じたユーザーがリツイートして拡散し、救急車がオフィスビルへ駆けつける騒ぎにまでなった。
「震災で流布されているデマや風評については、通報やサイバーパトロールによって“きっちり”と状況を把握しています。悪質なデマは日常生活に混乱をもたらすこともあり得るし、これから業務妨害などの実害が見受けられれば、即座に厳正な対処をする方針です」
警視庁ハイテク犯罪対策総合センターは、そう警告する。停電によってTVなどが沈黙するなかで、ネット情報は今回、多大なる恩恵をもたらした。しかし、その半面でツイッターを中心に、猛烈な勢いでデマが飛び交う弊害も招いている。
◆有名人のRTで爆発的に拡散
「今回の震災で流されたデマには、2つ特徴があると思います。一つは、主に震災の被害に遭った人たちの間で流布された不安や恐怖心に基づくデマ。もう一つは、被災者でない人たちから発信される、誤った支援情報。特に後者に関しては、目に余るものがあります」
そう話すのは、関連デマのまとめブログを作るなど、地震発生以来、デマをウォッチしてきた評論家の荻上チキ氏だ。なかでも「(前述の)ニセSOSをツイッターで流したデマと、実際には行われていない、防衛省による救援物資募集のウソ情報は特にヒドかった」と印象を語る。
「前者は悪ふざけにもほどがあります。後者も仮に善意に基づいた“勘違い”だったとしても、それによって救援の業務が滞り、助かるはずの人が助からない場合もあるわけです」(荻上氏)
確かに、ツイッターのリアルタイム情報に助けられた人も多い。だが一方で、その速報性が「デマ拡散速度」を速めた。
「有名人がむやみにリツイートすることで、爆発的に広まったりもした。善意の行動で人が死ぬこともあるわけです。人の命に関する情報デマならば、より悪質で注意が必要になります」
大災害などに見舞われれば、その不安や恐怖から被害を被った人々の間でデマが流れるのは致し方ない側面もある。だが、そうではない一般のネットユーザーからのデマが氾濫するとなると、これは放置できない問題だ。
【荻上チキ氏】
評論家。自身のブログ(http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/)内で震災関連のデマをまとめる。本誌で「週刊チキーーダ!」を連載中
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