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なぜ、日本の凄腕ラッパーたちは“団地”出身なのか? ANARCHY、スチャダラパーetc.

ヒップホップは団地から生まれる

サイプレス上野氏

ヤンチャな先輩たちからヒップホップを学んだ

 ANARCHYと同じく’80年生まれのラッパー、サイプレス上野氏も横浜市戸塚区の「ドリームハイツ」で生まれ育った団地っ子だ。 「ガキの頃は団地の隣に『ドリームランド』という遊園地があって、ジェットコースターの音やら一日中うるさい環境でした。だから、暴走族が走り回っても住民が気にする空気はなかった。友達の兄貴や先輩にスケーターやグラフティライターもいて、小学生ながら『カッケー! 俺もやりて~』って。ヒップホップの4大要素が身近にあり、中学生の頃には独学でラップを始めました。夜な夜な団地の友達の家に集まっては、皆でYOU THE ROCKの深夜ラジオを聴いて、俺のはがきが読まれたときはブチ上がりましたよ」  いわゆる郊外の荒廃した団地とは、やや趣の異なるポップさ、暴走族とスケーターが共存する時代に幼少期を過ごした影響は多大だ。 「俺達はB-BOYだったから、意識し合う族のヤツらに追いかけられて、玄関のドアを金属バットでボコボコにされた経験もあります(笑)。『ドリームランド』が廃園になってからは加速度的に、壁にグラフィティを描く練習もしたり、溜まってラップやスケボーしたり。横浜在住の先輩からは『あのゲットーな団地をお前はヒップホップの聖地にした』と言われるけど、本当に俺を育てた最高の場所。テレビに出るようになってからは活動も認められて、団地内の祭りでライブを依頼されるようになったんです。やっと地域貢献できるようになり感慨深いです!」  多様性を育む団地は、多くの可能性を秘めているかもしれない。 団地に縁のあるヒップホッパー ▼ANARCHY 京都府・向島ニュータウン ▼WEST HOMI 愛知県・保見団地 ▼GREEN KIDS 静岡県・磐田東新町団地 ▼KOHH 東京都・豊島五丁目団地 ▼サイプレス上野 神奈川県・戸塚ドリームハイツ ▼SEEDA 東京都・ひばりが丘団地 ▼NORIKIYO(SDP) 神奈川県・相武台団地 ▼ANI&SHINCO(スチャダラパー) 神奈川県・宮前平グリーンハイツ ヒップホップは団地から生まれる【磯部 涼氏】 ライター。’78年生まれ。音楽や文化を軸に社会問題について執筆。著書に『ルポ川崎』など。『新潮』にて「令和元年のテロリズム」を連載中。 ヒップホップは団地から生まれる【サイプレス上野氏】 ラッパー。’80年生まれ。「ドリームハイツ」の先輩後輩で結成したサイプレス上野とロベルト吉野のラップ担当。結成20周年を迎え、7月にももいろクローバーZなど豪華客演が参加したコラボEP『サ上とロ吉』をリリースした。 <取材・文/仲田舞衣 加藤浩之 撮影/長谷英史> ※週刊SPA!8月25日発売号より
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