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アニバーサリーイヤーを迎えたMaison book girlのサバイブ術_コロナ禍のアーティストたち

井上唯「Maison book girlってめっちゃカッコいいじゃん!」

――ブログで拝見したんですけど、この自粛期間中、組み立て家具を完成させるべく電動ドライバーを買ったんですよね? そんな細かいところまでチェックしてましたか(笑)。 ――その電動ドライバーの使い心地はいかがですか? 安いのを買ったから、威力が弱くて全然ネジが止まらなくて……。 ――あれっ!? 合言葉は「やめたい、フィジカル過信」。井上さんの細腕では手回しのドライバーを使ってもしっかりネジ止めできないから、電動ドライバーを買ったんじゃなかったでしたっけ? もっとガチなヤツを買わなきゃダメだったみたいです。でもそういう電動ドライバーは結構なお値段だったので、結局今持っているヤツよりもゴツい手動のドライバーを買い直して解決しました。 ――典型的な安物買いの銭失いだ(笑)。 いっぱい遠回りしました(笑)。
井上唯

井上唯

――自粛期間中、日曜大工に励む一方で、アイドル・井上唯としてやっていたことってあります? 騒音の問題があるからさすがに家でボイトレはできなかったんですけど、自粛期間が始まってちょっとしたら、いろんなダンストレーナーさんがオンラインレッスンを始めていたので、それに登録してみました。あとはなにをしたっけ? いろんなアーティストさんやアイドルさんがライブ映像をYouTubeにアップしていたので、それを観て勉強したりしていた感じかなあ。 ――その間、焦りや不安ってありました? 本当はベストアルバムは4月末にリリースする予定だったんですけど、それが延期になったし、そのベストアルバムのリリースツアーも延期になっちゃったら、最初のころは「もうアルバムはできてるのになあ」「早く出したいなあ」とは思っていたし、友だちに会えないことがすごいストレスになっていたんですけど、そのあとすぐにYouTubeライブみたいなブクガとしての活動が始まったので、それからはあまり焦りや不安は感じなくなりました。 ――では、過去のライブ映像に副音声的にコメントを寄せるYouTubeライブ企画は楽しかった? 楽しかったですね。普段、自分のライブ映像って内側から観ちゃうんですよ。ステージに上がっている当事者として観ちゃうから「ああ、全然声が出てないじゃん」とか「踊れてないじゃん」みたいな反省点ばっかり気になっちゃうんですけど、新型コロナの影響でちょっとライブの現場から離れていたのがよかったのか、今回は「私たちのステージ」としてではなく「Maison book girlという人たちのステージ」として観ることができたので面白かったです。 ――Maison book girlさんのパフォーマンスはいかがでした? 「めっちゃカッコいいじゃん!」「すごく面白い!」って思いました(笑)。 ――「井上って子、なかなかやるじゃん」と(笑)。 あの子、意外と悪くないんですよね(笑)。5年間活動してきた今だからこそ、あらためて自分たちのことを客観視できてよかったな、と思っています。 ――しかもあのYouTubeライブ企画はみなさんのアイデアによるもの。自粛期間を使って自ら過去を総括しているあたりもさすがだなと思いました。 でも苦肉の策というか、同じ事務所(ekoms)のクマリデパートみたいにかわいい子の集まったグループならトークやゲームをしている様子を配信してもサマになる気がするし、実際クマリのYouTubeチャンネルは「さおてゃん(クマリデパート・早桜ニコ)、かわいい」みたいな反応でいっぱいになっていたんですけど「私たちがそれをやっても……」というところはあって……。 ――いや、ゲームをやっている井上さんも「ゆいまーる、かわいい!」って言ってもらえますって! そうかなあ……。私たち自身もそうだし、スタッフさんもブクガにはあまりかわいいを求めてないみたいなんですよね。だから、ひとひねり加えて「じゃあ、過去のライブ映像を観てみよう」ってことにしてみました(笑)。 ――さらに6月の配信ライブに至ってはひとひねりどころか、幾重にもひねりまくった演出を施していました。 確かに終わった今となってはブクガならではのライブだったなとは思うんですけど、この5年ブクガのメンバーで居続けたから、私はそのノリに染まりすぎてしまったというか……。コショージから演出プランを聞かされたときは「今回はそういう感じか」「OK」って、わりとすんなり受け入れちゃってました。コショージから映像が乱れたり止まったりする演出をしたいって聞いたときも、もともと「長い夜が明けて」なんて曲自体にノイズが入っているし、「闇色の朝」も1コーラスが終わったら一旦音が止まっちゃうし、それを映像でもやるんだなという感じで。ただただ本番が楽しみでしたね。 ――実際本番も楽しめました? 好きなライブでした。「レインコートと首の無い鳥」も4回繰り返したわりにクドくなかったですし。私たち自身はライブで4回やっただけじゃなくて、レッスンやリハーサルでもさんざん歌っていたんですけど、全然飽きることはなくて。あと、アーカイブ映像を観ているときも、私には全然わからないすごい技術がたくさん使われていたので「なんだ、これ?」って夢中になれましたし(笑)。

「今までのCDは全部持っているから」とは思わせないベスト盤

――そしてその配信ライブ当日には、この5年の楽曲が網羅的に収録されたベスト盤『Fiction』がリリースされています。 5年でベストアルバムをリリースするのって世間的には早いものなんですか? それとも遅いのかなあ? ――5周年や10周年という区切りのタイミングで出すアーティストは少なくないですね。 そうなんですね。でも5年って言われても実はあまりピンッとはきてなくて。「もう5年もやってるのか」って感じなんですよね。 ――それはなぜ? わりとコンスタントにシングルもアルバムも出せているし、ライブもやっているので、あまり時間の流れを感じてないのかなあ。今回のベストアルバムについてもけっこうな曲数、リレコーディングをしているので、5年の歴史を振り返ったというよりも、新しい1枚を作ったという気持ちのほうが強いですし。 ――そのボーカルを録り直した曲、たとえばベスト盤バージョンの「bath room_」と2015年に発表した「bath room」を聴き比べてみたりは? しましたし、それぞれ別の魅力があっていいなって感じでした。 ――ご自身の成長を実感したりは? 普段はそんなに大きな変化は感じないんだけど、今回あらためて実感した感じですね。 ――普段の活動の中で成長を実感することはない? たとえば「bath room」であればデビューしたときから今までずっと同じオケで歌い続けていることもあって、5年前と今の音源だけを聴き比べることってなかったですから。常に新しい「bath room」が生まれている感じ。私は4年前の「bath room」と3年前、2年前の「bath room」と昨日の「bath room」も全部連続したできごととして知っているから、劇的な成長はあまり感じなんですよね。 ――昨日歌った「bath room」と今日歌った「bath room」では今日のほうがいいものになっているんだろうけど、劇的な変化は認められない。井上さん自身は、その微細な変化・成長を日々積み重ねているだけに逆に5年前の自分と今の自分を比べようもない、と。 そうですね。 ――となると、このベスト盤って収録曲こそ古いものもあるけど、実はあれから5年後の2020年のブクガならではの音が刻まれたアルバムだったりします? そういう感じかもしれないですね。今回「snow irony_」や「river」のキーを上げたのも原曲をもらった当時よりも私たちが高い声を出せるようになったからですし。だからこれからブクガを知ってくださる方にとっての入門編的なアルバムになっているのはもちろんなんですけど、応援してくれているファンの方にも「今までのシングルやアルバムは全部持ってるから、ベストはいいや」とは思わせない1枚になったな、と思っています。 ――新曲の「Fiction」も収録されているし、既存のファンにも聴きどころはありますしね。 しかもその「Fiction」もそうだし、最近のほかの曲もそうなんですけど、私たちのできることが増えるにつれて、サクライさんがブクガの楽曲でできることも増えている気がするのも面白いんですよね。 ――その「ブクガとサクライケンタができること」が、「Fiction」に見られる4/4拍子のドラマチックなバラードということ? そういう感じですね。最近の曲は以前の曲に比べて私たちの歌声を前面に押し出すようなアレンジになっているし、歌を聴かせる録り方をしてくれていて。「Fiction」はその最たるものというか。シンプルにいい曲を私たちに歌わせるというチャレンジをしてくれたんだと思っています。 ――これはみなさんに聞いていることなんですけど、2020年下半期ってなにをしましょう? 自粛期間を経験したことで、今ならではの活動の仕方がちょっとわかった気がするし、配信ライブについてもこれから何度も繰り返していけばさらにコツを掴める気がするので、このご時世だからこそできることにどんどんチャレンジしたいですね。
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「三次元のリアル和田輪としてがんばります」
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##(商品情報~アルバムタイトル)
『Fiction』

##(商品情報~収録内容1)
【CD】
01. bath room_
02. snow irony_
03. lost AGE_
04. cloudy irony
05. river
06. sin morning
07. faithlessness
08. townscape
09. rooms__
10. 言選り_
11. レインコートと首の無い鳥
12. 狭い物語
13. 夢
14. 長い夜が明けて
15. 闇色の朝_
16. 悲しみの子供たち
17. Fiction
18. non Fiction

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