更新日:2020年08月30日 17:05
エンタメ

<純烈物語>相模大野の焼き肉店名物”純烈タイム”は落語と大黒摩季がつくった<第60回>

焼き肉店がつくった手作り寄席

 1986年8月30日に開催された第1回の寄席には前座と二つ目の噺家が手作りの高座へあがった。テーブルと座布団一枚、そしてバックには押し入れから外してきたふすまを2枚立てた。  やる前は失礼のないようにしっかりと舞台を作らなければと思っていたが、円楽党のマネジャーに「そんなことはしないでください! テーブルと座布団とネタ帳があればいいですから」と言われ、めくり(演者の名前が書かれた紙製の札)はおかみさんが自分で書いた。  お客さんが読めないかもと気遣い、そこにルビ(よみがな)までつけたところ、寄席文字を書く麻布大学の先生が「僕に書かせてください」と手をあげ、以後はずっと達筆を振るってもらっている。  そんな素朴さに満ちた落語会も口コミで広がり、1年を迎えた頃に三遊亭好楽師匠が店に来て「こういうのが本当の寄席っていうもんだ。この場所を大事にしたい。僕が揃えるから、僕の夢でもある四派競演をかなえてくれ」と熱い口調で言われる。  そして本当に落語協会、落語芸術協会、円楽一門会、落語立川流と4つの流派が競演できる特別な場として認められ、流派の隔てなく噺家が集い、楽しませている。 「八起寄席の道を作ってくれた好楽師匠には今も足を向けて寝られないわ。最初の1年は、月に3回、八起にちなんで8のつく日にやっていて、それでも少なくて申し訳ないと思っていたの。わたしは興行師じゃないからお金をお客さんからいただくのが申し訳なくて。  だから最初は木戸銭として200円いただいて、それでも心苦しかったから198円の缶ビールをつけたわけ。そこに小さい袋のピーナツをつければ200円を超えるから」  庶民の娯楽である落語本来の姿は店を飛び出し、500回記念は店にほど近いグリーンホールでおこなわれた。「芸事というのはお金を払って見るもの。だから招待券は出さず、本当に聞きたい人たちだけを集めた」結果、満席の大盛況となった。  1周年記念は5代目三遊亭圓楽師匠を招き相模原南市民ホールで開催。大御所登場となると2周年の時もそれ相応の期待を持たれる。そのあたりは詳しくなかったおかみさんがみんなに聞くと「それはもう、次は談志師匠しかいないですよ!」と言われた。
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手作り寄席に談志を呼ぶために……
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

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焼肉八起(やきにくやおき)
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