更新日:2020年10月12日 13:10
エンタメ

<純烈物語>“諦めない”を反芻しながら白川裕二郎は「おばちゃんたちの笑顔」を欲している<第66回>

休みが取れた分、歌への影響は?

 白川の話を聞くうちに休めた一方で場数が減った分、それが歌に影響したのではと思った。それは、ファンと会えないという気持ちの面とはまた別のところでの弊害だ。 「あるのかなぁ……ああ、あるかもしれないですね。それは年間何百本とやってきたことが数本になったら影響がないわけないし今は正直、自信がないですもん。去年のように殺人的なスケジュールでやらせてもらって、来年いきなり復活するとなった時に俺、歌えるのかなってすごく不安ですよね。一度ペースが崩れちゃうと、体力は今の方があると思うんですけど使う部位が違う気がする。  純烈で培ってきた体力や気持ちって、純烈用として作られていったと思うんですけど、何ヵ月も休んだことで衰えているでしょう。それはリハビリのようにイチから構築していくしかない。復活したらしたで大変だろうなあ。今も想像できないですからね」  実戦の重要性は、どのジャンルも同じである。プロレスは日々の練習で何度も反復することで技は出せても、それを受けることはブランクが空くと難しい。  実戦から離れると、体の耐久力が落ちるからだ。プロレスは相手の技を受けることで鍛えた肉体のすごみを見る者に伝える。  いかにして相手の技をディフェンスし、ダメージを最小限に食い止める格闘技との違いがそこにある。受けるのもかわすのも、共通しているのはそこに鍛錬と技術を要すことだ。  長期欠場から復帰するプロレスラーは、自分の体が相手の攻めに耐えられるかどうかの不安と闘いながらリングに上がる。識者は技を出す時よりも、食らったあとにどう動けるかの方に視点を置いて復調具合を判断する。  どんなにボイストレーニングを積んでも、毎日のように歌う環境とは明らかに条件が違う。キツいながらも、ハードスケジュールによって白川は純烈のボーカリストとしての基準点を保ち続けることができた。  そうした不安を抱えつつも、白川は今やるべきことと向き合っている。それは、自信をつけるために1kgでも重いバーベルをあげようと努力するアスリートのようでもある。  今年は紅白というゴールも立てづらかった。そうした中で、何が白川のモチベーションとなっているのか。 「おばちゃんたちがキャッキャッいって喜んでくれている笑顔が見たいです。ああ、おばちゃんたちと写真が撮りたいよなあ……」  世のマダムたちを笑顔にさせていた白川の方が、今はそれを欲している。有観客ライブが再開したあかつきには、純子と烈男の皆さんも我慢に我慢を重ねた上で一気に解放されるはず。それは、メンバーも同じということだ。  世のおばちゃんたちの笑顔が、白川裕二郎を支えている――それが、止まっているようで止まっていない純烈とファンの関係性なのだ。
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ