“DJ住職”を直撃、お寺で婚活パーティーやDJイベントを開催する深いワケ
先日、築地本願寺(東京都中央区)が婚活サービス「築地の寺婚(てらこん)」を開始し、「お寺で婚活!?」と話題をさらった。実は、お寺での婚活イベントは以前より日本各地で行われている。北海道伊達市の紋鼈寺(もんべつじ)で住職を勤める奥田正弘さん(30歳)は、自坊を「婚活寺」と称し、婚活にとどまらず、何とお寺でのDJイベントも開いている。境内に流れるEDMやハウスミュージック。一見、奇想天外な活動にも思える。いったい、なぜ……?
お寺とDJイベントや婚活パーティー、この特殊な組み合わせの背景には、「ムラ社会での若者たちの孤立」が深く関わっているという。
「お寺を継ぐとなった時、今まで自坊ではやってこなかったことをやろうと決めました。それが婚活だったんです」
そう語る奥田さんは、自身も婚活パーティーで結婚相手と出会ったひとりだ。地元を離れ京都にて仏教を学び、合間に婚活などのイベント運営にも関わっていた経歴を持つ。
「ノウハウというほどでもないですが、イベント運営に関わったり参加者として婚活パーティーに参加したりしていたので、良し悪しが分かるんですよね。こういう婚活いいよねとか、こういう風にしたら出会いやすいよねっていう雰囲気が分かるので。やっている内容は普通の婚活パーティーと同じでも、お寺でやるってだけで雰囲気が変わるじゃないですか。それでおもしろがってくれる人が多くて、いつも定員を超えて申込みがあります」
奥田さんにとってお寺での婚活イベントは、若い人に向けたコミュニティ作りの提供も兼ねているそうだ。
「田舎には娯楽がなく、若い人たちが繋がれるコミュニティもありません。繋がれる場所、受け皿を増やしていく必要があると思っています」
奥田さんが住む北海道伊達市は、人口約3万4千人の田舎町。函館まで車で2時間半、札幌までは2時間と、北海道の中では比較的アクセスが良い。
しかし人口は右肩下がりの状態にあり、少子高齢化が進んでいる。
「コロナ以前から『若い人同士の繋がりの薄さ』は感じていました。田舎は遊ぶ場所や娯楽がなく、都心のように若い人が集まるコミュニティも少ないです。都会であれば夜遅くまでやっている飲食店があるから、そういうお店がコミュニティのひとつとして機能していますよね。
でも田舎は閉店時間が早いし、そもそもお店の数も多くありません。ムラ社会特有の『人の目』もあるので、結婚適齢期の人が地元の飲み屋さんにひとりで行っていると『あの人どうしたんだろう』と怪しく思われてしまう。結果的に孤立し、孤独を深めている人たちが多かったところに、このコロナです」
コロナ以前は定期的に開催していた婚活イベントも、緊急事態宣言を機に中断せざるを得なくなった。
世間でZoom飲みなどオンラインでの交流がピックアップされる中、奥田さんはより一層リアルでの「場作り」の必要性を感じたという。
「田舎では周辺環境的な問題からリモート化が遅れていて、そもそも世間で流行っているようなZoom飲みなどもあまり浸透していません。同年代の間で『こんな時期だしオンライン飲みしようよ』って声はあまりかからなくて、あっても『俺はちょっと馴染まないしいいかな』って人が多かったですね。
このご時世ワガママかもしれないけど、馴染めないっていう感覚はどうしてもあると思います。そうやってオンライン化に馴染めず、リアルでの繋がりから孤立している人たちのためにも、お寺という場を提供できないかなと思ったんです」
学生時代の経験を活かし「婚活イベント」をお寺で主催
コロナ禍だからこそ、田舎ではリアルイベントが必要
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福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0
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