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“DJ住職”を直撃、お寺で婚活パーティーやDJイベントを開催する深いワケ

お寺でDJイベントを開催。周りの反応は?

DJ「オンライン化しきれない人への受け皿も必要」とイベント開催を決めた奥田さん。婚活という参加の縛りがあるイベントではなく、幅広い層が訪れられるビアガーデン式の音楽イベントを選んだ。  コロナ禍でのイベント開催に世間の目が厳しくなっている中、それでも開催を決めたのには理由があった。 「この時期にイベントをやることに対して、批判は来るかもしれないと考えていました。批判的になる気持ちは分かるんです。でも、『じゃあコロナが落ち着くまで我慢しましょう』でやっていけるのかなと。人の命も大事だし、経済も大事。田舎の飲食店ほど経済的に厳しい状況で、他府県の人が助けてくれるわけでもない。  不安はあるけど一歩ずつやっていって、できない中で新しいスタイルを確立していかないと、経済的にも精神的にも保たないんじゃないかと強く感じています。僕が動くことで他業種の人に『こういう風にやればいいのかな』って気付いてもらえないかと考えました」
DJプレイ中の奥田さん

DJプレイ中の奥田さん

「ミュージック寺ス」と名付けたイベントでは、奥田さん自身がDJを担当。入場は完全予約制とし、イベント開催を不安に思う高齢者への配慮として、告知はSNS上のみに留めた。  当日は感染防止対策を徹底し、広い境内を利用してソーシャルディスタンスを確保。結果として、約50人の参加者が集まったという。  参加者からは、「今はリアルのイベントが屋外といえど無く、やっぱり外で飲めるのは楽しい! もっと屋外でやったほうがいい!」といった声が寄せられた。 「久しぶりにイベントをやってみて、オンラインでは満足できない部分はやっぱり多くて、リアルに勝るものはないんだなと感じました。地元の大学生たちにアカペラ演奏をお願いしたんですが、『大学生も演奏の機会がなく、オンライン授業ばっかりで、こういう機会が欲しかった。まさかお寺でこんなことができるとは』と感想をいただきました」  気がかりだった近隣住民からのクレームなどもなく、逆に「年に一度くらいは賑やかな時がないと寂しいですよね」と暖かく見守る声が多かったそうだ。

利益はゼロでもやる意義はある

DJ住職 気になる収益部分での成功はどうだったのだろうか? 「お寺なので儲けは出しちゃいけないんですよ。婚活もDJイベントも赤字が出ないようにだけ気を付けて、実質の収益はゼロです。うちのお寺で出会ってできるコミュニティそのものが、お寺にとってのプラスであり、地域にとってのプラスにもなりますから」 「ミュージック寺ス」での手ごたえを機に、婚活イベントの再開も決めた奥田さん。コロナ禍での制限も踏まえながら、これからもお寺での「場作り」や「縁作り」を推し進めていくつもりだ。 「いろんな人がいる中で、疎外感を感じている人や、世間の流れに馴染めない人を取りこぼしたくないなって思っています。リアルイベントをやらないほうがいいって主流派がいるのも分かるんですが、そこからこぼれちゃう人もやっぱりいるので。  仏教的に言うのであれば、阿弥陀さんの教えやお救いって、誰でも平等に受けられるもので、そのお救いから漏れることはないんです。でも、現実社会では取り残されてしまう人たちが絶対に出てくる。自分が全部救えるわけじゃないですが、孤独や繋がりの薄さを感じている人たちを拾い上げるような動きをしていきたいと考えています」  お寺を中心とした次世代へのコミュニティ作り。コロナ禍で苦戦しているさまざまな業種・地域に向けたモデルケースになるかもしれない。<取材・文/倉本菜生>
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0
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