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月5000万円の赤字! コロナで崖っぷち、ライブハウス・ロフトの新しい稼ぎ方

会場の席数の7倍近くのお客が配信を見てくれることも

――ライブと配信はステージ上でやる事はほぼ同じですが、届け方がまったく違いますよね。スムーズにシフト出来たのはすごい。 加藤 スムーズではありませんよ!(笑)。ただ2010年ごろの動画共有サービス「Ustream」がブームの時に憶えたノウハウが少しはあったので、ロフトでは配信できる環境はありました。でも当時は無料配信がメインで「多少映像の質が悪くても……」という程度でしたが、今の有料配信はそういうわけにもいかない。固定カメラの映像ではとてもお金をもらえないですから。 石崎 お金を取るからには、ある程度の質を保たなきゃいかないのに、スタッフが機材の使い方がわかってなかったんですよ。カメラの使い方や「ホワイトバランスって何?」みたいなところからはじめましたから(苦笑)。 加藤 あと配信サービスもこのタイミングでいろいろ出てきましたし、どれを選ぶか日々試行錯誤です。 石崎 配信をはじめた最初の頃、チケット販売を兼ねた配信サービス「zaiko」を使った時は衝撃でした。それまで生のイベントって当日までしかチケット売れなかったわけですけど、「zaiko」は終演後も保存された映像を見るためにチケットが買えるんですよ。3月に人気バンド『cero』のライブをやって、その評判を見て終演後にチケットが伸びたと聞いて、「そういう売り方があるのか!」と驚きましたね。
配信業務

現在配信業務は店舗スタッフが行っている。最初は慣れなかった業務も、月数百もの配信の経験でひとりでこなせるように。(写真は阿佐ヶ谷ロフトA)

音楽の配信ライブがなかなか出来なかった理由

――ロフトはトークの配信はしていましたが、音楽はなかなか配信ライブも行えませんでした。その理由は? 石崎 トークに関しては「ちゃんと会話が聞き取りやすければいい」というところがあるから配信もやりやすい。でも音楽は「聴こえればいいや」というわけにもいかない。音楽ライブはカメラも4台くらい、スタッフも増やして対応しないとダメですね。それにライブハウス批判の流れで「とにかくバンドは集まるな」という世の中の空気でしたから、ミュージシャンもそれを気にして動けなかった。 ――トークイベントの有料配信は、売り上げがどうだったのでしょうか? 石崎 3月5日に最初の配信イベントをやったのが、声優の関智一さん(『ドラえもん』スネ夫役、『機動武闘伝Gガンダム』ドモン・カッシュ役など)。会場の席数の数倍のお客さんが配信で見てくれて、「これが配信バブルか!」と思いましたね(笑)。その後も、会場座席数の7倍くらいの人数が見てくれたイベントもありました。あとはプロインタビュアーの吉田豪さんみたいにもともとロフトで人気な人は、配信でさらに人気を集めていて、あらためて地方の人からも熱望されていたんだなと思いました。“豪さんの日”というくくりで一日3番組を配信した時は、会場だったらせいぜい500人くらいのところをのべ2000人以上見ていましたから。 ――4倍近くの数が見ていたんですね。それ以外に配信で人気の出演者はいますか? 石崎 ラッパーのダースレイダーさんはYouTubeで無料配信もやってるんですけど、有料配信でも人気ですね。さらに時事芸人のプチ鹿島さんや社会学者の宮台真司さんといった人との組み合わせになるとさらにバズる。トークのホストとしての力が圧倒的な人は強いです。
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アメリカ在住の町山智浩さんも呼べた
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