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月5000万円の赤字! コロナで崖っぷち、ライブハウス・ロフトの新しい稼ぎ方

それでもライブハウスは残したい

――ライブハウスというと客同士がブツかりあう“モッシュ”が起きるようなメージですが、そういった濃厚接触なライブは今後可能なんでしょうか? 加藤 さすがにまだモッシュが起きるようなライブは出来ないですね。お客さん自身もこの場をなくすような事をしたくはないし、アーティストやライブハウスを守ろうということをわかってくれてるんだと思います。 ――やはり配信じゃなくて生でライブを見たいって人が集まってきていますか。 加藤 音楽ライブは家のパソコンで聴いても、生の臨場感は伝わりづらい。これから音楽のライブハウスは客を入れていくことを考えていかないと。基本的にライブハウスは“どれだけいい音を届けられるか”で勝負してますから。 ――コロナ禍で入場者は制限してきましたが、いま新宿ロフトは何人くらい入れられますか? 加藤 もともとの定員がスタンディングで550人なんですけど、今は着席で80人くらいですね。でも、感染防止ガイドラインも緩和されてきていますし、各省庁とやりとりしていて、従来の50%まではお客さんを収容できるようになりました。ただ、まだお客さんの方がライブを楽しみにいくモードになれてないというのはありますね……。「ここで感染者が出たらまたバッシングされるのでは……」という不安はあります。僕らもお客さんもトラウマになっているんですよ。
イベント

無観客配信イベントでも検温や消毒、出演者の間には透明のシールドを置くなど最大限の配慮を行っている。(写真は10月21日『『AVについて女子が知っておくべきすべてのこと』をせっかくだからみんな知っておこう』)

――このまま緩和されていって、ライブハウスがコロナ以前の光景に戻る姿は想像できます?

これからロフトは、ライブハウスはどうなる?

加藤 ある意味、ライブハウスを見直すきっかけでもあると思うんです。よくマスコミから「元のライブハウスに戻れると思いますか?」と訊かれますが、その「元」ってどこなの? って思います。スタンディングで酸欠状態でやるライブって、パンクが盛り上がって以降の光景だから80年代から後。70年代まではライブハウスも椅子に座って観るのが普通でした。新宿ロフトだって昔は椅子があったんです。自分も82年頃、名古屋のライブハウスに行き始めたころはフロアに椅子があって、踊る時はそれをわざわざどかしてましたからね。 ――ライブハウスの光景も変わってきてるわけですね。 加藤 モッシュやダイブが日本のライブハウスで起きるようになったのも90年代以降ですから。これから新しい基準が出来ていくんだと思います。オンラインとハイブリッドになるのもそうだし、「ライブハウスってこんなとこだよね」っていうのが自然に形成されていくんだと思います。考えようによっては、面白い時代ですよ。今までのルールが一度なくなってまた作っていく、戦後の闇市みたいなもんですから。 ――渋谷や下北沢のライブハウスが閉まったりするのを見てると苦しい状況だとは思いますが、頑張ってほしいです。 加藤 ライブハウスってこのコロナ渦でいちばん売上が下がった業界じゃないですか? 一時期はライブができなくなって「売上が10割下がった」所もたくさんある。それを思うと、まだまだ踏ん張っている所が多いんじゃないですかね。それは皆好きではじめた商売だから、ですよ。商売って「儲からないからやめよう」っていうのが普通だけど、ライブハウスはもともと儲からないのがわかってやってるから苦しくても頑張れる。もう意地だけですよね(笑)。 (取材・文・撮影/大坪ケムタ)
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