恋愛・結婚

多様性時代の恋愛と結婚――“日本一有名なニート”pha×文筆家・佐々木ののか

普通以外の選択肢があることを知るだけで、逃げ道が生まれる

ダイバーシティ時代の恋愛と結婚佐々木:取材を通して出会った家族は、最初こそ“普通の結婚”に適応しようとしていました。ですが、その型に対して違和感や生きづらさを感じていましたね。 pha:ののかさんの著書に登場する、シェアハウスの男性に単年度更新の契約結婚を提案した女性。恋愛関係になると相手を傷つけてしまうなど生産的でないが、誰かと一緒に生きていきたいという理由から、「お財布は別々」「お互いを性的に独占しない」などの条件つきで契約結婚されていましたね。 佐々木:長谷川さんですね。彼女に限らず皆、恋愛の人、子育ての人、生活の人というふうに、細かく因数分解し、それぞれの要素の組み合わせの最適解を求め、独自の結婚のかたちを築いていました。 pha:普通とされない在り方を選ぶか選ばないかは別として、普通以外の選択肢があることを知るだけで、逃げ道が生まれて心に余裕が生まれます。そういう意味でも、恋愛や結婚のかたちが多様化するのは素晴らしいことです。 佐々木:恋愛結婚から出産、子育て。かつて私自身が思い描いていた正規ルートは、彼らとの出会いで、一つのコースでしかなくなった。何事も多様で、“予定不調和”を前提として考えられるようになったのは大きかったです。

“望ましいかたち”を探す旅に出るのも悪くない

pha:エネルギーが有り余っていた20・30代の若い頃は、恋愛や結婚に振り回されても人生に彩りを感じられたけど、結局は同じことの繰り返し。アラフォーになって、そういう気分に僕は着地した。 佐々木:90歳になっても性欲が枯れないおじいさんはいますよ。 pha:僕は昔と比べ、緩やかに減っているから、このまま年齢とともに性欲が削がれていけば、その先に待つのはただの虚無でしょう。そうなったらひとりで猫を撫でて過ごすしかないですよね。  恋愛や結婚のかたちは、時代や年齢によって大きく変わっていく。他者への誠実性の担保が前提だが、“望ましいかたち”を探す旅に出るのも悪くなさそうだ。猫と暮らす、それも一つの選択だろう。
夜のこと

同人誌即売会・文学フリマ東京で話題を集めた恋愛短編集『夜のこと』(2巻)を大幅に加筆修正して一冊に。11月15日に扶桑社から発売

【pha(ファ)】 作家。シェアハウス「ギークハウスプロジェクト」発起人で、元“日本一有名なニート”。著書に『どこでもいいからどこかへ行きたい』(幻冬舎)などがある。
愛と家族を探して

「さまざまな結婚のかたちを実践している人たちは、私たちが思っているよりもずっと多い」とは佐々木氏。亜紀書房より発売中

【佐々木ののか】 文筆家。“家族と性愛”を主なテーマに据え、エッセイや取材記事を精力的に執筆している。初の著書『愛と家族を探して』(亜紀書房)が話題になった。 <取材・文/谷口伸仁 撮影/杉原洋平>
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夜のこと

元”日本一有名なニート”・pha(ファ) 初の小説を執筆!
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