斜陽産業で働く若者たち。憧れのテレビマンも「できる人から辞めていく」
かつては輝きを放ち、憧れの「仕事」、安定した「職業」であったのに、今では「斜陽産業」と言われる業種がある。こうした業界には新卒などの若手は来ず、中高年の社員たちが「自分だけは」としがみつき、なんとか最後まで生き残ろうという地獄絵図が展開されている……と思われがちであるが、実際はどうなのか?
実際に「斜陽」と呼ばれる業界に身を置く、4人の若者たちに話を聞いた。
「できる人から順に辞めていく、というのは本当です。特に中堅クラスの“できる人”は、外資系や有名ベンチャーに引き抜かれていき、派手な仕事をしている印象です」
こう話すのは、東京都内の放送局勤務・中田祥太さん(仮名・20代)。テレビ局などの「オールドメディア」は斜陽だ、などと言われるが、社員の平均年収は今なお1000万をゆうに超える。中田さんも30才目前で、すでに年収1000万に到達している。
「広告費がネットに持っていかれ、台所事情が厳しいというのは本当ですが、それでもまだやっていけている、というのが本音でしょう。テレビ局によっては、すでに放送事業の収入より、イベントや不動産収入に重きを置いている。
どうしてもメディアが好き、というやり手たちは早々に社を離れて、残ったのはあまり優秀じゃない人たち(笑)。放送最前線の現場からは社員の数がどんどん減って、非正規社員に置き換えられている。社員は、非正規社員の管理をするだけ、というような実態もあります」(中田さん)
十分な給与もあり、やりがいは感じていると言うものの「メディア人」としての自覚はもはや「ないに等しい」とも言う。
「上司に言われたのは、もうこれ以上給与は上がらない、ということ。仕事に慣れていない非正規社員たちが入れ替わり立ち替わりで入ってきて、仕事上のミスも多くなって…。時代の流れの早さを感じざるを得ませんが、高給が補償されるなら、別にメディアに固執もしません。元々優秀な人が多い会社だし、なんとかなるかなって」(同)
高給取りならではの余裕を見せる中田さん。
一方、同じ「メディア」でも出版業界の斜陽っぷりは、もう十数年前から指摘されており、すでに中小出版社は大手に吸収合併されたり、大手に見向きもされない出版社は、すでに潰れたりしてしまった。
都内の零細出版社勤務・森野新一さん(仮名・30代)が悲痛な面持ちで証言する。
「30代なのに若手、という時点でお察しでしょう(笑)。自分より若い子が一人もいない、来たとしても『給与が低い』とか『ブラックだ』とかで、数週間で辞めていくんです」(森野さん)
森野さんは、かつてファッション誌や漫画雑誌の編集部に在籍していたが、いずれも廃刊に追い込まれ、今やっていることといえば、成人向け雑誌の編集長兼ライター兼カメラマン兼営業……要するになんでもやらなきゃいけない“一人編集部”状態だ。
「編集長と言えば聞こえがいいですが、次にいつ出るか分からない雑誌ですよ(笑)。上司もほとんど辞めましたが、残った上司も仕事がなく、なんとか居残って給与をもらい続けようという魂胆の連中ばかり。僕だって今さら別の仕事ができないし、最後まで生き残りそうな上司の介護を続けて、給与をもらい続けるしかない」(同)
テレビマンに比べると、もはや「座して死を待つ状態」である。ただし、以前は「できる人たち」もいたのではないか?
「できる人たちは、だいぶ前に辞めたか、すでにフリーになったり大手に転職していたりします。紙媒体からWebに舞台が移っただけで、編集者とか書き手は絶対に必要ですからね。人によっては、以前の倍以上稼いでいる人もいます」(同)
……と、二極化している実情があるんだとか。
憧れのテレビマンの実情「できる人から辞めていく」
“斜陽業界”と呼ばれて久しい出版業界の編集者
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