更新日:2020年11月30日 09:21
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トヨタ自動車“4秒短縮”のインパクト。コロナショックからの大回復を検証

海外からの需要がとてつもないことに

 特に、その回復を支えたのが、アメリカでの需要です。今年、トヨタの北米の工場は3月下旬から約50日間コロナ禍で稼働を停止していましたが、需要の戻りは想定より強かったのです。  アメリカではトヨタはセダンの会社ではなく、“でっかいクルマ”を作るメーカーとして知られています。これは比較的単価が高く、利益率も高いピックアップトラックや多目的スポーツ車(SUV)などが当てはまります。  SUVのRAV4やレクサスブランド車などの販売が特に好調で、なんと現在は在庫が逼迫している状態。増産対応を急ピッチで進めています。実はトヨタ、世界販売台数の約3割を北米が占めており、そこでの収益改善が全体の業績を底上げしているのです。  しかし、北米市場については、まだまだ先行きが安定して見通せる状況ではありません。今後、経済が本格的に立ち上がらなければ、富裕層の消費が一巡してした後に自動車市場も再び低迷状態に戻りかねないという懸念点もあります。そんなトヨタは2021年どうなるでしょうか。

豊田社長の中間決算発表からわかること

 そのトヨタの未来を占ううえで重要な事実があります。それが、6日に開かれた中間決算発表会。6日の中間決算には、豊田社長が登壇しました。  実はこれ、豊田氏が社長に就任して以来、史上初めてのことなのです。  また、トヨタの社長が年度の途中で決算説明会に出るのは2002年以来のことです。つまり、今回の社長出席は“異例”とも言えるものです。ここには、豊田社長の並々ならぬ思いが表れていると言えるでしょう。それを示すのが下記の発言です。 「私は方向性を示しただけですが、すべてはその方向に向かい動き続けた現場の力だと思っております。この動きは、トヨタにとどまらず、日本自動車工業会をはじめとする5つの業界団体へと広がりました。自動車は波及効果が非常に大きい産業です。雇用は550万人。納税額は約15兆円。経済波及効果は2.5倍になります」と並々ならぬ自動車産業への熱い想いを語っています。  今回の中間決算で、豊田社長は“トヨタフィロソフィー”という言葉を口にしました。  これは全世界で37万人となっている従業員全員で共有できる「トヨタフィロソフィー」というものを定め、そこでトヨタの使命を「幸せの量産」と定義したものです。 「利益を出せない会社は未来への投資ができない」とも話す豊田社長。  世界では環境規制の厳格化が進み、脱エンジン車の流れも加速しています。未曾有のコロナショックの中でもトヨタは底力を見せることができましたが、真の実力はコロナ後に試されることになるでしょう。
トヨタ 馬渕

馬渕磨理子

経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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