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<純烈物語>11・5渋谷公会堂ライブレポート たったひとりの観客の前でも唄い続ける意味

2083席の会場にたったひとり

 開演15分前になると、執事の案内で14列22番の座席へ移動。ステージ周りや1階後方にスタッフがいるとはいえ、2083席分がガラーンと空いている会場に身を置くのは初体験と思われる。さぞやなんとも言えぬ感覚に陥っただろう。  その頃、純烈の4人は本番前の囲み取材に応じていた。例によって笑いに次ぐ笑いの会見。その中で酒井は、オンラインチケットの売れ行きに苦労したことを明かした。  年配者のファンが多い純烈だけに、ネットを通じて申し込むのがハードルとなった。YouTube配信ならそこにアクセスするだけで閲覧できるが、有料の場合は支払いを含めての手続きとなる。  まずはプレイガイドであるイープラスに会員登録し、純烈チケットを申し込んだあとにも支払い方法をセレクトする。純烈は10日前に公式YouTubeサイトでわかりやすい説明動画をアップ。すると1000枚で止まっていたのが倍に膨らんだ。  純烈らしいと思ったのは、それだけをアップするのではなく「オンラインチケットを手売りする」と題し、酒井と白川裕二郎が街中を歩いてライブを宣伝しまくるロケ映像とともに流したことだ。これも実は忙しい撮影の合間を縫って収録したものだった。

「オンラインチケットを手売りする」

 オンラインチケット(モノとしてはないわけで)を手売りするということ自体、間が抜けていて面白いし、この作りならマダムもお爺ちゃんお婆ちゃんも見入ったあと映像に沿って手続きできる。配信ライブは足を運べない地域のファンも参加できるし、キャパシティが無限ゆえフルハウス以上のオーディエンスを集められる。  2日前の11月3日、嵐が新国立競技場における「アラフェス2020」を配信。その視聴者数は300万人とも500万人とも言われており、コンテンツパワーがあるアーティストほど可能性が広まる。 「嵐は300万? ウチも家族全員で見ていましたからね、嫁と娘がペンライト振って。嵐がいなくなってしまうって、300万のうち30人ぐらいはウチに流れてこんかな。男性グループはチャンスやで。SMAPさんが止まった時に、SMAPいなくて寂しいといって純烈のファンになってくれた方がムチャクチャ多いんです」(酒井) 「そんなこと言ってもな、今日ここでやると告知しているのに出待ち一人いなかったやないか。嵐さんと同じ日だったら、囲み取材もゼロですよ。今日は(採算的に)どうしてもヤバかったら後日、1人のお客さんのところへ請求書がいきますんで」(小田井)  そんなやりとりが続く中、酒井が今回のライブにおけるテーマをさり気なくアナウンスする。本当に伝えたいこと、深みのある思いに関してリアクションが薄いのは、昨年のNHKホール単独公演の時と同じだった。
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「僕らはお客さんが少ないと燃える」
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

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