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<純烈物語>後上翔太は「コロナ禍前とは違うなにか」をまとえる存在<第72回>

純烈_後上翔太

<第72回>「コロナ禍前と違う何か」をまとえるのは、後上翔太なのではという正直な思い

 ライブのステージから離れている間、各番組に出演したさいメンバーがもっとも多く聞かれたのは「休みができたことで新たに始めまたことはありますか?」だったと思われる。リードボーカルとして顔的ポジションにいる白川裕二郎、LiLiCoとの夫婦の日常という切り口で小田井涼平の2人は、そうした発言をするたびにネットニュースでもとりあげられた。  その場合、だいたい後上翔太が最後にまわってきて「プレステ4とウーバーイーツ」と答えるや「そんなん、何もやってないのと一緒やろ!」と酒井一圭に突っ込まれ、オチになる。ファンからすれば、変わらぬ純烈の呼吸だ。  とはいうものの、後上本人は少なからず自分の趣味に対するコンプレックスめいた引っかかりを感じていた。白川の日曜大工、小田井の手先のこと、酒井は家族とのふれあい……いずれも今的な言い回しをするなら“映(ば)える”写真や動画になる。  それに対し、自分はゲーム機のコントローラーを持っているだけという絵ヅラ。それが映えなくても、本人にとってはまごうことなき楽しい趣味なのに、口にするとイマイチという顔をされてしまう。 「映える趣味がある人は、映えるためにその趣味を持っているんじゃないかって勘ぐってしまうぐらい、俺って映えねえなって思ってしまうんです。普通はそんなこと気にせず選ぶのに、他のメンバーが揃いも揃って映えるものばかりなので。ゲームも『ウイニングイレブン』のネット対戦で世界中の人々を相手にやっていて、そこで『世界が相手なんです!』って熱弁を振るえば振るうほど冷ややかな目で見られるんですよね……」

新しいことに挑戦するも……

 一応、4月頃に何か新しいことを始めようと思い立ち、フライパンを購入しコンビニエンスストアで売られているカットされた野菜を炒めてみたのだが、これが『美味しんぼ』の海原雄山なら裸足で逃げ出すほどのすさまじいシロモノに。ベッチョベチョなのに、ところどころが半生で嫌な歯応えがあり、適当に調味料を入れたところ、なぜか味が薄かった。  それでも残すのは嫌なので無理してすべて平らげた。そこに費やした時間をひとことで表すと「苦行」になるのだという。まるで野菜炒めがまずかったのはフライパンの実力不足だと言わんばかりに後上は以後、二度と使っていない。  初日で見切りをつけた料理と比べると、ネットゲームの方はこの期間中に世界規模でフィールドが広がった。料理やプラモデルや家の中でやることは目の前にあるものだが、こちとら地球上が舞台とあってスケールも大きい。にもかかわらず、どうしてそれをドヤ顔で語ると「シーン」となってしまうのか。 「昔から似たようなことを思っていました。小さい頃、図工や体育が得意というと微笑ましいのに、逆に算数が得意で図工は空の絵を描けと言われて青一色で『空です』と言い張って出したって話すと、ヤバいやつと思われてしまうんですよね。科目が入れ替わっただけなのに、なんで?  勉強は全部0点でも、体育が得意だと『さすがはスポーツマン!』とか褒めてもらえる。平等じゃないの、そこは? 駆けっこが得意な子と勉強ができる子は同列であるべきだと思っていたのが蘇ってきて、そんな不条理さを夜な夜な感じる時間が増えました」  面白いことに、この疑念に関して後上はすこぶる熱く語っていた。他人にはそこかよ!と突っ込まれてしまう内容であっても、真顔で訴えるあたりがおじさん3人と違う妙味であり、人間臭さなのだと思いながら耳を傾けた。
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一番年下でありながらの“動じなさ”
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