お金

借金500万円の多重債務者でも「コンビニでカネを返す瞬間は恥ずかしい」

現金に少し余裕があった

 最近はずっと日雇いのアルバイトをしていて現金に余裕があったので、毎月の返済金額が少ないところに試しに4,000円ずつ返してみることにした。生き残っているカードがあれば、これでまた借りることができる。アイフル、プロミス、Amazonカード、この3社は会社を辞めた後に借りた会社だから10万円ずつしか借りれなかった。  返済金額は4,000円。一社一社は大した金額じゃなかったが、めんどくさいから全部払うのをやめてしまっていた。競馬やパチンコで一撃当たれば一括で返してしまおうと思っていたが、令和はツキがなかったのでその機会は訪れなかった。  Amazonカードはそもそもカード自体が失効していて支払う事ができなかった。もう少し待ってくれたらこうして返し始めたというのに、もったいない。だが、ここはクレジットカードにも関わらずキャッシングの枠を最初からつけてくれた。その点では一番窮地を助けられたカードなので、きっと僕は彼らを忘れないし、いつかまた信用情報が回復した後に借りるだろう。  アイフルとプロミスはもともと電話をあまりしてこなかった。彼らは自動音声での案内ばかりでそっけなく、3ヶ月も放置してるのにまるで僕に興味がないみたいだった。そんな風だと逆に返したくなるというのが男心というもので、 「こんなに借りてるのにまるで興味がないみたいだ、ふん、おもしれー会社……」 と思い始めてしまった。返済の駆け引きにおいて、僕の敗北が決まった。

返しに行くときって恥ずかしい

 どれだけ働いても何故か常に2万円以下しか入っていない財布から1万円札を取り出す。アイフルもプロミスもコンビニで返済ができるから、パジャマで家を出る。エレベーターで他の人と待ち合わせが被った時、金を返しに行く用事のためだけにマンションを出ると思われるのが恥ずかしくて、携帯を見ながら、 「トマト、あれ、生協って今日何安かったっけ」 と独り言で嘘をつく。誰も聞いていないのに嘘をつく時、それは自分が恥ずかしいことをしている自覚があるときだ。つっかけたサンダルが見えないように服の裾を引っ張る。金を返しに行く瞬間は、目についた自分の全部が恥ずかしくなる。本当は借りに行く方が恥ずかしいのに。  コンビニに入ってすぐにATMに向かう。このコンビニは雑誌コーナーの隣。誰も並んでいない。  プロミスのカードを差し込む。画面に「ご返済・お借り入れ」の文字が出るや、すぐに後ろに人がいるか確認する。これも恥ずかしい瞬間の一つだ。
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コンビニATMの罠
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