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<純烈物語>白川は生脱ぎ、小田井はLiLiCoに生電話……生配信ライブで「紅白への道」を体現<第75回>

「太りすぎだ!そんなんじゃ紅白出れねぇよ!」

「白川、おまえは猫とイチャイチャしていただけ。後上はゲーム、ウーバーイーツ三昧。小田井、おまえは終始へらへらしやがって。何がトレジャーハンターだよ。酒井、おまえ振り付け忘れてただろ。踊れよ、リハから踊れ(実話)。あと太りすぎだ。そんなんじゃ絶対に紅白なんて出れねえよ!」  太りすぎだと紅白には出られないというのは、今年で71回を迎える長い歴史の中で初耳だ。これはもう、あと数ヵ月でどうにかできるような案件ではない。それでも出場するにはどうすればいいか。今林は「SNSでバズること」とドヤ顔で言い放った。  敏腕特任マネジャーの今林の命により、すでに先ほどのラウンドシーンもツイッター上に動画としてアップされていた。そして頭の中に描かれた紅白3年連続出場までの流れを雄弁に語る。 「明日の『スッキリ』などのワイドショー、スポーツ新聞でとりあげられる→スッキリのクイズッスのコーナーを担当する山ちゃん(山里亮太)が家に帰って妻の蒼井優さんに報告する→蒼井さんが主演したNHK制作映画『スパイの妻』のベネチア映画祭銀獅子賞受賞を祝うパーティーでNHK会長に『純烈、今年も頑張ったみたいですね』と伝えてくれる→NHK会長も『今年も純烈、頑張ったんだな』となり、3年連続紅白出場決定する」  捕らぬ狸をオマージュするかのごときプレゼンテーションに感心するメンバー。だが、それにはまだまだ「いいね」とリツイート数が足りない。今林は合計100万という目標を提示した。 「100万なんてちょっと無理……」と酒井が言いかけたところで「だったら紅白3年連続なんてハナっから無理だって話だ!」と、今林は突じょブチ切れ。ガランとした渋谷公会堂に、その怒声が必要以上にグワングワンと響いた。 「おまえらさ、無理なことを実現させてきたんじゃないのかよ。そもそも2年連続出場だってできると思ってたか? 周りのみんなだって無理だと思ってたよ。俺だって無理だと思ってた。ああ……こんなことがあったら純烈も終わりだって。でも、無理なことをおまえらは実現したんじゃないか。やれ!」 「確かに、俺たち4人だけじゃ無理だと思ったけど、ミュージシャンのみんな、スタッフのみんな、ファンのみんなと力を合わせれば紅白に出場できたし。100万リツイートか……やってみましょう!」

「いいね&リツイート」で3回目の紅白を後押し

 かくして純烈生配信ライブは、100万いいね&リツイートを目指す場となった。これも、会場にいるオーディエンスにリアクションが限られた通常のコンサートでは成り立たない、ネットでつながっているからできる形だった。
純烈_渋公4

”ドローン操縦士”として現れた秋山準(左)

 3曲目『また逢う日のために』の様子もドローンによる映像が流される。そして、それを操縦するスタッフが舞台袖に現れた。歌い終えた酒井は、自分もやってみたくなり気軽に声をかけてコントロール機を譲り受けたが、マスクを脱ぐとそこには屈強な男がそびえ立ていた。 「……プロレスラーの秋山準選手ですよね!?」  この夏、DDTプロレスリングで「準烈」なるユニットを結成し、本家も公認した秋山準がなぜここにいるのか。今林によると「紅白を目指す純烈に気合を入れるため、そして卓越したドローン技術を披露していただくために来てもらった」とのことだった。  全日本プロレスに入団しキャリアをスタートさせた秋山は、あのジャイアント馬場の薫陶を受けた本流のレスリングを誇る男。しかし、その一方でドローン技術も体得していたとは、裏情報に詳しい『東京スポーツ』紙の記者さえつかんでいない情報だった。  実はこの日、秋山にプロレス方面の取材をしており、その時は渋公へいくことなどまったく匂わせていなかったばかりか「熱い生配信ライブになりますように!」と、あたかも遠いところから見守っているぞと言わんばかりのツイートをしていた。「一日で準烈と純烈の両方を取材した唯一の男になるな、ンムフフフ」などと一人悦に入ったところ、想定を上回る風景が目の前に現出し、驚かされたという次第だった。  プロレスラーが気合を入れに来たとあれば、もうアレしかない。純烈3年連続紅白出場を祈願したチョップが、適度に太った笹団子のような酒井の胸板を、さらにはそれを受けてのたうち回るリーダーの姿にウヒャウヒャ笑っていた後上へ快音も高らかにサク裂。 「遠くから応援しているようなことを言って、チョップしに来てくれるんだよね。夏に秋山さんのチョップを食らったあとドラマの撮影もうまくいって、本当に縁起ものだと思ったので、これからもまたうまくいくでしょう。後上も食らったので、残りはあと2人だね」(酒井)  思えば、このあと酒井と後上はメドレーも合わせると10曲も歌っている。プロレスラーのチョップを食らった上でそこまでパフォーマンスし続けることができたアーティストは、世界広しいえど2人だけだろう。このあたりも紅白選考に加味するべきだと思った。
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ピンスポを浴びて……ステージ上で脱いでいく白川裕二郎
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

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