65日目。オーナーの城下さんに見送られながらゲストハウスを出発し、岡山に向かった。姫路の市街地を離れてしばらくすると、山や川などの自然が広がるようになり、道の勾配も徐々にきつくなっていく。が、この旅で少し体力がついてきたためか、上り坂でもそれほど息切れをしなくなっていた。山景色の中にふいに現れる鮮やかな紅葉を楽しむ余裕さえあった。 　西の空が夕焼けに染まる頃に岡山市に到着した。岡山城と後楽園の間を流れる旭川に架かる橋を渡って市街地に向かう。夕焼けに似せるかのように淡いオレンジ色の光を放つ欄干沿いの外灯が冷たい風といっしょにゆっくりと真横を通り過ぎていく。 　予約していたゲストハウスは昭和レトロな雰囲気の漂う奉還町商店街のすぐ近くにあった。今日からここに7泊する。1階はカフェバーになっており、チェックインの手続きを済ませると、そこでウェルカムドリンクとして岡山の地酒をいただいた。 「そこの商店街でおすすめのお店あります？」 「刺繍の店とか面白いですよ」 「刺繍ってどんな？」 「オーダーメイドでなんにでも刺繍してくれるんです」 　カウンター越しに若い男性スタッフと会話を楽しみながらちびちびと酒を飲んだ。天井から吊るされたミラーボールは店内の赤っぽい照明を浴びながらゆっくりと回転し、細かな光をちかちかと反射させていた。 【63日目】 ＜支出＞ 食費：501円 ＜収入＞ 7137円 残金：1万7726円 【64日目】 ＜支出＞ 食費：825円 ＜収入＞ 3476円 残金：2万377円 【65日目】 ＜支出＞ 食費：1110円 宿泊費7泊分：1万4333円 合計：1万5443円 ＜収入＞ 0円 残金：4934円 ＜取材・文／小林ていじ＞バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。