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<純烈物語>オンラインライブでメンバー感涙「見上げてごらんツイートを」<第76回>

ファンの声を映し出し、スマホで「いいね」を返す

 ステージ上のスクリーンへ、#純烈によるツイッターのタイムラインを流すだけでなく、事前に募集したメンバーとの思い出の写真も映し出し、あの頃を共有する。通常のラウンドならば1対1のコミュニケーションにとどまるが、これならば会場にいなくとも全員で一つひとつの思いを胸に刻むことができる。  2000年代前、平沢進は観客の反応によってコンサートの進行が変わる「インタラクティブライブ」の中で、インターネットを通じ現地の模様を生配信しそれを視聴する在宅オーディエンスの書き込みを、ステージ前の薄幕に映し出していた。ただしそれはBBS(掲示板)で、SNSがなかった時代だからステージ上のアーティストが即興のリアクションを示すまでにはいたっていなかった。
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「愛でしばりたい」を熱唱

 それから20年ほどの歳月をかけてツールが進化し、スマートフォンひとつでメンバーが反応を返せるようになった。『今夜はドラマチック』『恋は青いバラ』『キサスキサス東京』『星降る夜のサンバ』『愛でしばりたい』をメドレーで歌いつつ、4人のメンバーは自身のアカウントでどんどんいいねをつけていく。 「僕は心配していなかったけど、ライブ中に否定的なツイートがあったら嫌じゃないですか。アンチや、否定的なことを書きたがる人もいるんだろうけど、今日はなかった。それがすごいんです。純烈のすごさというか、純烈の規模でそれがないというのは普通は考えられない。スクリーンに流れるツイートを見ながら、僕は純烈が今でもいいお客さんたちに支えられているんだなと思えました。  2083席は空いているけどそれを意識させないような、ちゃんとみんな見ているんだよという意識になってもらいたかった。ファンの皆さんにも参加してほしいし、純烈もそれに応えたいアーティストだし。こんなに素敵なファンに支えられているアーティストはいないですよ。これは、純烈しかできないことだと思いました」  #純烈で拾うかぎりは、ネガティブなつぶやきもそこに出てしまう。また、ポジティブなツイートよりも目につくものだ。でも、ササダンゴが言うようにそれらしきものは見た限り流れてこなかった。 「純烈のファンが見ているんだから当たり前」となるのだろうがこの場合、支持率の高さが重要なのではない。そこに集まった全員が、ちゃんと同じ思いを共有できているところに価値がある。  何も気兼ねすることなくメンバーと密にいられた頃の笑顔のまぶしさを見るうち、スクリーンの像がにじんできた。メンバーからもらったいいねによる歓喜も、機械的にスクロールし続けるツイートにより伝わってくる。

感情の昂ぶりを抑えきれなくなった白川、そして酒井

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ツイートにメンバーが次々「いいね」をつけていく

 メドレー後の紅白初出場曲『プロポーズ』から、デビュー曲『涙の銀座線』というつなぎも、それだけで10年間の過程を描ける。そして、このセットリストによって誰よりも感情の高ぶりを抑えられなくなったのは、白川裕二郎だった。途中から声が出なくなり、うずくまると酒井一圭がバンドの演奏を止める。 「この曲を聴くと、なんだか昔の自分に戻ったような気分になって。結成して3年、毎日ボイストレーニングしかしなくて、こんなんじゃ紅白どころかデビューできるのかって。それでも諦めたくなくて頑張って頑張って、やっとメジャーデビューできて、嬉しかったよな。  でも、いくら歌を練習しても全然うまくならなくて……こんな歌、誰も聴いてくれない。誰が聴いてくれるんだ?って、毎日毎日悩みながら歌っていた。それでも頑張って前に進もうとする自分が確かにいて……」 「……ほら、お客さんも心配するしさ。おまえが頑張ってここまで来たから、このステージに立っている」 「頑張れてるかな? あの頃みたいに頑張っているかな? 今林(久弥)さん、俺たち頑張っているかな?」 「頑張っていると思うよ。少なくとも俺はそう思っているし、ファンの皆さんもそう思っているって。直接聞いてみようよ。今、ツイッターでコメントできる状況でしたら、皆さんの率直な意見を聞かせてください。白川は、小田井は、酒井は、後上は10年前と比べて、いや最近でもかまいません。皆さんが出会った頃と比べて、頑張ってますでしょうか? 応援でも、励ましでも、ダメ出しでも不満でも、#純烈をつけてつぶやいてください」
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「純烈は頑張れているでしょうか?」
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

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