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虐待、被災、うつ病…これでも貧困は自己責任か? 25歳男性の過酷すぎる半生

コロナでのストレスが子供に向かう

 2019年度に認知された児童虐待件数は19万3780件で過去最多になり、2020年度は新型コロナの影響で、さらなる増加が不安視されている。ストレスに耐えかねた大人たちの不満のはけ口にされるのは、いつも幼い子供たちだ。

壮絶な半生を筆者に語ってくれたDさん

 こうした問題は、今回の新型コロナウイルスの一件に限った話ではない。天災は家庭に潜んでいた問題を一気に表面化させる。表面張力で耐えていた水面に一粒の水滴が垂れるように、家庭崩壊の最後の一押しになりえるのだ。 「自分が衰弱していく様子を、SNSで実況したら面白いかなと思って始めたんです」  そう話すのは、都内で一人暮らしをするDさんだ。どこか自分を相対化し突き放したような冷静な口振りと、白髪交じりの頭髪、疲れ切った表情――ぽつりぽつりと静かに身の上を話す合間、彼はこれまでのツラい記憶を思い出しているのか、ぐっと目を見張って怒りを抑えたような表情を見せることもある。2020年4月にはうつ病の診断もおり、相当な苦悩を重ねたという風貌のDさんだが、彼はまだ25歳の若者だ。

実の両親には頼れない

 一人暮らしをしていた2019年6月から始めたTwitterは、いわゆる「鍵アカウント」で、閲覧制限をかけているにも関わらず、1000人近いフォロワーがいる。両親からの金銭的な搾取によって口座からお金が尽き、ライフラインが全てストップした状況から始めたが、今では彼の重要な居場所だ。 「SNSで出会った人たちには、実生活でもずいぶん助けられました。家具や家電をもらったり、役所の手続きに付き添ってもらったり。親から逃げるときにも車に乗せてもらいましたし。今の家も、徒歩圏内にフォロワーの方がいてよく会っています」  今はそういったネット上の人間関係と、生活保護を利用してなんとか暮らしているというDさん。一般的な家庭環境であれば、実家に身を寄せて体勢を立て直すことも検討できるかもしれないが、彼の場合はそうもいかない。 「NPO団体が運営している貧困施設で暮らしていた時、実際に支援者の人からも同じことを言われました。『実の親子なのだから、必ずわかりあえる。君はもったいないことをしている』と。でもウチはそんなんじゃないんです」  話を聞くと、彼の壮絶な半生と到底信じがたい家庭環境が垣間見えた。出身は東北のとある地方都市で、理髪店を営む母と測量士の仕事をしていた父の間に生まれたDさん。父母からの虐待は幼少期から始まっていたという。 「母はいわゆる『教育ママ』タイプで、情緒不安定な人でした。母方の祖父が認知症になってから理髪店の経営状況も悪化したようで、ますます追いつめられていました。当時はちょうど小泉政権の規制緩和前後で、地元の理髪店が低料金のチェーン店に圧倒されていた時期でもありました。父も家族に相談せず離職を繰り返す人で、音信不通になってしまうし」
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裸で家の外に放り出されて…
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