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虐待、被災、うつ病…これでも貧困は自己責任か? 25歳男性の過酷すぎる半生

施設よりも親との同居がとにかくツラかった

 ただ、そんな環境でも本人は親と同居していた期間が人生で最もツラかったと続ける。 「結局施設から出てしまえば他人ですから。親は一生関係があるもので、呪いのようなものです」  筆者とDさんが初めて出会ったのも、この関東某所の施設での生活中のことだ。施設には門限の22時までに寝に帰る程度で、日中はネット環境を求めて近くの商業施設に行く。「施設に住所があるうちは就職活動ができないんですよ」と、Dさんが疲れた顔で言っていたのを思い出す。施設の悪評が酷く、入居者であることがバレると就職ができないのだという。2020年12月現在、施設を抜け出し都内で暮らす彼だが、その後生活はどうなったのだろうか。 「コロナで就活はストップしていますし、そもそも経歴を正直に話すと誰も雇ってくれません。雇用契約を結ぶときの緊急連絡先用に『名前と連絡先だけなら貸してあげる』というフォロワーの方もいるんですけどね。でも鬱が酷くて、夕方になると低速回線で見る動画みたいにグルグル思考が回ってダメになる。とにかく今は次の目標が見つかるまでは、ゆっくり休みたいです」

生活保護受給を非難されて…

 家庭環境から逃げ出すことにこれまでの歳月を費やしたDさん。やっとのことで安らげる時間を手に入れたと思いきや、最近会ったフォロワーには生活保護を受給していることについて厳しく非難され、悔しい思いをした。 「生活保護を受けることは恥だ、粛々と生きろと言わんばかりでした。確かに生活保護のおかげで人間的な生活もできていますし、感謝はしています。この状態から脱したいという気持ちも、もちろんある。でも、数年前までは他ならぬ自分自身が福祉について勉強していたり、きちんと働いていたわけで、まさか受給者側になるなんて自分でも思っていなかったですよ」  最近になって厚生労働省の呼びかけもあったように、生活保護は国民の権利である。無用な誹りによって、保護の対象になる人々が受給を控えるようになる事態は避けるべきだ。  天災、虐待、貧困、精神疾患など自分のコントロールできない要因によって、誰もが生活苦に陥りうる現代。他者の生きづらさを想像し、寛容な心を持つことが必要なのではないだろうか。社会福祉を足がかりに、Dさんの人生に希望が見えてくることを祈るばかりである。 <取材・文・撮影/大河内光明>
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