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530円のハンバーグを出す洋食屋。調理に電子レンジを使う深い理由

デミグラスソースも楽しみの一つ

スゴいぞ町洋食 しかし、私は店ごとの個性を雄弁に語るデミグラスソースの味わいを最初から最後まで純粋に堪能したいという欲望が先に立つ。なので、品格に欠けると自覚しつつも、これは省略不可避なのだ。微かにソースで汚れた目玉焼きがライスにのる風景もまた絶景である。  そうやって味わうニューバーグのデミグラスソースを仁さんは「よくある普通のデミグラスソース」と言う。確かにそうなのかもしれないが、そんな「普通のデミグラスソース」は店ごとに同じものは一つもない。これが洋食屋の楽しみの一つである。  この店のそれは濃厚だ。丁寧に、というか洋食屋ではそれは当たり前のこととして遂行されているわけだが、しっかり炒められたルウのほろ苦さをベースにしつつ酸味を主軸にした味わいに、否が応でも飯が進む。デミグラスソースの純粋さを味わった瞬間、間髪を入れずライスの一角を上にのった目玉焼きとともに切り崩し、大口開けて頰張ってしまう。目玉焼きハンバーグの幸福度は、ここで最大値となる。  このほかにも、デミグラスソースと対をなすメキシカンソース、トッピングのコロッケや、ドレッシング、カレーなども語り尽くしたいことがある。次回、話の続きをさせていただきたい。先日、取材としてこの店を訪れた最後に、仁さんに「ところで、何でまたウチなんかを取り上げることになったの?」と問われた。何でも何もない。「好きなんで紹介したいと思って」と答えたら、飄々とした仁さんが一瞬涙腺を緩ませた、ということだけ暴露させていただいて今回は終わりとしたい。 【稲田俊輔】 鹿児島県生まれ。自身も飲食店を手掛ける飲食店プロデューサー。著書に『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』(扶桑社)、『南インド料理店総料理長が教えるだいたい15分!本格インドカレー』(柴田書店) <取材・文/稲田俊輔 撮影/林 紘輝(本誌)>
関東・東海圏を中心に和食店、ビストロ、インド料理など幅広いジャンルの飲食店26店舗を経営する円相フードサービス専務取締役。自身は全店のメニュー監修やレシピ開発を中心に業態や店舗プロデュースを手がける

飲食店の本当にスゴい人々

料理や飲食店の内側にある本当の姿を解き明かす!

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ニューバーグ
東京都杉並区高円寺北3-1-14
11~22時(ラストオーダー21時45分)、無休
昔ながらの製法で作られたハンバーグを、安価な値段で提供し続けてくれているサラリーマンにはありがたいお店

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